機能性食品で「怪しい健康食品」を取り除いている 阪大・森下氏が指摘する「小林製薬問題」の本質

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――機能性表示食品制度が始まってから7年ほど経つのに、トクホとの違いが消費者に伝わってない理由をどう考えますか?

トクホが難しすぎるのかもしれない。それにトクホは1製品を開発するのに数億円、認可取得に4年あまりもかかる。大企業でないと申請を通すのは難しく、その間に商品開発のトレンドが変わる場合もあり難しい。だからトクホ商品は消費者ニーズに合わず、増えていない。

機能性表示食品は、もっと短期間で開発が可能だ。すでに届け出が出ている成分を使えば500万円くらいで開発することができる。地方の中小企業などにも幅広く活用されており、個人が申請するケースもあるほどだ。

――「国が認可している」というトクホのイメージを、機能性表示食品に抱く消費者もいたのでは。

誤認があるのは事実だろう。そもそもトクホが医薬品のように「効く」というイメージを持つのもいかがだろうか。あくまでも食品で、薬ではないのだから病気の治療効果があるわけではない。

日本の薬機法では、効果があるものは薬で、ないものが食品とされている。食品は、人体に効果がないというのが大前提。機能性表示食品の論文も限られた状況の中ではこうだった、ということでしかない。消費者のリテラシーを上げてもらわないといけない。

日本の食品行政は複雑

――消費者にとって、トクホや機能性表示食品のメリットは何なのでしょうか。

健康の維持増進だ。病気を治療したり予防するのは医薬品だが、そこまでは必要としないレベルの人に対し、セルフメディケーションとしての食品の役割がある。

日本の食品行政は複雑で、ビタミンなどの栄養機能食品は届け出がいらないから健康被害もわからない。まったく有効性を表示できないはずの、いわゆる健康食品も依然として大きな市場がある。できる限り情報が公開されており、健康被害情報の収集も可能にし、そうした怪しいものを市場から取り除いているというのも、機能性表示食品の大きなメリットだ。

――森下さんは大阪万博の総合プロデューサーも務めています。大阪市はパビリオンのレストランで、アンチエイジングに関する機能性表示の規制緩和を進める方針だったと思います。

小林製薬の一件が起きてしまったので、消費者のニーズは高いと思うのだが、なかなか議論を進めるのは難しい。外国では、国内では薬機法に触れるような文言が書かれたサプリも多く、国内外で規制が違う。万博では海外の方が多く来られるので、日本でもわかりやすい表示が望ましいと思う。そうしないと外国人にとってはどんな商品かがわからないからだ。

兵頭 輝夏 東洋経済 記者

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ひょうどう きか / Kika Hyodo

愛媛県出身。東京外国語大学で中東地域を専攻。2019年東洋経済新報社入社、飲料・食品業界を取材し「ストロング系チューハイの是非」「ビジネスと人権」などの特集を担当。現在は製薬、医療業界を取材中。

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