「孫の収入増で生活保護打ち切り」妥当でない根拠 働きながら正看護師を目指す若者を襲った悲劇
この点、2018年度からは大学や専門学校に進むことを理由とした世帯分離の場合、住宅扶助(家賃相当の生活保護費)の計算では、世帯員の人数としてカウントできることになりました。ただ、生活扶助(食費や光熱費等に相当する生活保護費)など、その他の生活保護費が減額されることに変わりはありません。
学生自身の生活費や学費については、アルバイトをしたり奨学金を受けたりすることなどによって、自分で用意をする必要があります。
――今回のケースではなぜ生活保護が打ち切られたのでしょうか?
生活保護は、世帯の居住地や世帯人数などによって計算される最低生活費という金額を、収入が下回る場合に開始され、収入が上回るようになると廃止される制度です。
今回のケースでは、孫の収入と祖父母の収入を合わせると、最低生活費を上回ることを理由として生活保護が廃止されました。孫の収入は准看護師として病院で働いて得たものです。
たしかに、生活保護が廃止された時点では、孫の就労収入と祖父母の年金収入を合わせると最低生活費を上回っていたようです。しかし、孫は准看護師になってからも、正看護師になるために看護学校に通い続けていました。
正看護師になるには実習を受ける必要があり、実習期間は病院での就労収入が下がります。それに備えて収入を増やしていたところ、世帯分離解除と保護廃止がなされてしまったのです。
県も途中で方針変換 生活保護を再開
――生活保護に対するネガティブな意見も珍しくないネットでも、今回の判断には批判的な見方が多いようです
今回のような進学する子どもに対する世帯分離は、生活保護を受けながら大学や専門学校で学ぶことを認めていない現行制度の下で、それでも子どもの進学を認めるためにおこなわれるもので、その目的は将来的な世帯の自立を促すことにあります。
今回のケースでおこなわれたように、准看護師を取った段階で世帯分離を解除してしまったら、正看護師の資格取得は難しくなり、世帯分離をした目的を完全には達成できません。
実は熊本県も、廃止からおよそ1年後に、正看護師の資格を取得したほうが自立助長に効果的だとして、改めて孫を世帯分離して生活保護を再開しています。このようなことからしても、世帯分離を解除せず、祖父母の生活保護を継続するという判断は十分にあり得るものでした。