イトーヨーカ堂「上場検討」がなんとも心配な理由 顧客理解が欠如したままで、本当にうまくいく?

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あるいは、最近、人が多く集うのは「カフェ」。筆者はここ最近、特に都心周辺のカフェについてリサーチをしているが、休日となると、どこのカフェも行列ができている。

そういえば、ヨーカドーの敷地は大きい。いっそのこと、ワンフロア、すべてカフェにしてみるなどどうだろうか?

郊外のショッピングモールのフードコートに行くと、そこで中高生たちが、だべりながら勉強をしている様子などが見受けられる。彼らは店の回転率の点から言えば、優良顧客ではない。しかし、彼らの存在はショッピングモール全体に活気を与えている。「人がいる」ということの重要性。それを、カフェやフードコートは作れるはず。

ヨーカドーを15店舗見て思ったことの一つに、「とにかく人がいなくて寂しい」ことがあった。せっかく改革を進めたとしても、人がいなくて寂しさばかりが目立っては、運営はうまくいかない。

昨今、都心はカフェが全然足りていない。これは多くの人が感じていることだろう。先日、筆者が何気なく投じたポストに、驚くほど多くの共感が寄せられたのだが、時代が変化したということなのだろう。

谷頭和希のXのポスト
(出所:筆者のXより)

ところで、現在、ヨーカドーは前述したアパレル大手・アダストリアとの協働を進めていて、そこではアパレルと食料品との買い回り需要を追求しているらしい。

いるらしいのだが、現状では衣料品コーナーと食料品コーナーがフロアとして分かれていることなども踏まえると、正直、この策がうまくいくかは、よくわからない。

それよりも、明らかに目的があって行く人が見込めるカフェを大胆に進出させてしまったほうが、店全体の活気が生まれるのではないだろうか。実際、アダストリアは「ニコアンド」でカフェ事業も展開している。

ニコアンドのカフェ
二子玉川ライズにある「niko and … COFFEE」。近くに住む担当編集によると「いつも、すごく混んでいる」という(編集部撮影)

いっそ、カフェ事業とのコラボのほうが、光明があるのでは?と思ってしまうのは、私だけだろうか。

「楽しい」空間をヨーカドーに作ってほしい

勝手に、いろいろ書いてしまった。

ドンキにはなぜペンギンがいるのか (集英社新書)
『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』(集英社新書)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

でも、それぐらいの大胆な改革がない限り、「ヨーカドー」の「場所」としての優位性を生かすことはできないのではないか。

さらに、以上の提案は、GMSのあり方を否定するものかもしれない。

ただ、実質的にセブン&アイ・ホールディングスからも見離され、自律的な改革案を求められている今、ヨーカドーは、本当にこれまでの姿から脱皮しないといけないのかもしれない。

ちなみに、こんなめちゃくちゃ書いているが、私はヨーカドーファンである(じゃないと、23区の全店舗をめぐらない)。日本全国に、私のようなヨーカドーファンはいるはずで、きっと、その人たちは、ヨーカドーという空間で、楽しい体験をしてきたと思う。

だからこそ、ヨーカドーには、これからもさまざまな人を幸せにしてほしい。そして、「空間」という強みを生かせば、きっとヨーカドーはまだまだ人々を幸せにすることができると思う。そう思うからこそ、こんな記事を一本書いてしまうのだ。

谷頭 和希 都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家

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たにがしら・かずき / Kazuki Tanigashira

都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家。1997年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業、早稲田大学教育学術院国語教育専攻修士課程修了。「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾 第三期」に参加し宇川直宏賞を受賞。著作に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』 (集英社新書)、『ブックオフから考える 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』(青弓社)がある。テレビ・動画出演は『ABEMA Prime』『めざまし8』など。

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