トランプ勝利に各国の外交関係者は身構える。アメリカ・ファーストが引き起こす外交の混乱とは。
米国の地政学的な位置は極めて独特である。太平洋と大西洋に挟まれ、陸地ではカナダとメキシコに隣接するだけである。今まで直接的な侵略の脅威を感じることはなかった。
そのため米国の外交政策を論じるとき、地政学の基本的な考え方である「勢力圏」や「生命線」という発想は重要ではなかった。米国の外交政策は独自の展開をたどり、国際情勢よりも国内の政治事情によって決まる傾向があった。
現在、各国首脳はトランプ前大統領の再登場に身構えている。
その外交政策は戦略よりも個人的な判断やスタンドプレーで行われ、「予測不能」といわれている。トランプ氏が当選した場合、どのような政策を打ち出すのか予想しがたい。
孤立主義が外交政策の基調
トランプ氏が外交のグランドデザインを持っているとは思えない。第1期政権の4年間に安全保障担当補佐官は4人更迭されている。更迭された一人であるジョン・ボルトン氏は「トランプは国家利益より、自分の利益を優先する」と語っている。経験と知識が豊富な外交専門家ではなく、大統領に“忠誠”を尽くす人物が登用され、専門家は政権から排除された。
ただしその外交政策を個人的な要因だけで説明するのは間違いである。米国の伝統的な外交政策の流れの中で理解すべきである。
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