難しい哲学が一転しておもしろく感じるプロセス 哲学YouTuberがひもとく、哲学の秘話

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反対に、わかりやすさだけでは、誤った理解を招くおそれがありますし、哲学の浅瀬で水遊びをしているだけの軽い知識しか得られません。

このような理由から、哲学は初学者にとってハードルが高く、おもしろくない学問だという誤った認識が広まっているのです。

加えて、世の中には哲学用語を順番に紹介しながら「正解」や「定説」を解説する形式の入門書が多数存在します。

しかし、哲学を学ぶ本当の醍醐味は、正解や定説がわからなくても、疑問を持ち、「なぜか?」「よりよく生きるにはどうすべきか?」などと考えをめぐらすことです。そうした考えを通じて、私たちの生き方についても見つめ直すきっかけが得られます。つまり哲学は「よりよく生きるためのツール」だといえます。

哲学は、古代に生まれた2つの思想から始まり、「2つの源流思想と対立軸」という構造によってその歴史が花開いていったという経緯があります。

そして哲学の源泉である2つの思想は、同じ事柄を問いつつも異なる考えを示しました。その後、時代に応じて少しずつ哲学者たちの関心や前提が変化し、問い自体もその形を変えていったプロセスこそが哲学の歴史です。

この構造を理解したうえで、偉大な哲学者たちの主張の最重要ポイントと、彼らが思考を深めていったプロセスをストーリーとして知っていけば、あれほどとっつきにくく感じられていた哲学が、一転して身近でおもしろい学問だと再発見できるはずです。

それではここからは、みなさんが哲学のおもしろさを実感できるような、哲学に関する古代から現代まで、4つの哲学コラムをお伝えします。

古代の哲学史は噓だらけの逸話集だった?

古代の哲学者たちが書いた作品は、ほとんどが失われています。プラトンやアリストテレスのように、まとまった形で複数の作品が残っているケースは少ないです。特にプラトンは、書いたものがすべて残っており、失われた作品は1つもないと考えられています。これは、2000年以上にわたる人々の努力の結晶です。

ここで問題となるのは、「まとまった作品が残されていない哲学者たちの思想をどのように知るのか」です。1つには、誰かが古代哲学者の言葉を引用している場合です。たとえば「パルメニデスはこのように言っている……」と書いてあれば、続く文言はパルメニデス本人の言葉だと考えてよいでしょう。こうした文言は、専門的には「断片」といわれます。

あるいは、誰かが哲学者の学説をまとめる形で、思想の要約として後世に伝わります。その思想の要約が、古代における哲学史です。いくつか事例をご紹介しましょう。

古代の哲学史で貴重な資料は、ディオゲネス・ラエルティオス『哲学者列伝』です。哲学者たちをイオニア学派とイタリア学派の2つに分け、古代の哲学者たちの生涯と逸話が詳しく書き記されています。

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