なのに、である。本来であれば、まず鉄道趣味があり、その中で何がメインなのか問われ、そうして細かい枝葉の先の趣味分野にたどり着くはずなのに、単に女性であるだけで、おおざっぱに「女子鉄」として、ひとくくりにされてしまう事象が発生している。これは「鉄道趣味は男性が主流」という前提に起因していると私は思っている。
鉄道に乗るのが好きな人が、「私は乗り鉄です」と自分を指す言葉として使うことができるのに対して、女子鉄という単語は、あくまで男性の鉄道趣味者の視点から女性の鉄道趣味者を見たときに用いられる気がする。「女子鉄の蜂谷さん」とご紹介にあずかることがままあるが、男子鉄という言葉は、自分の知るかぎりまだ聞いたことがない。
女性は「教えてあげるもの」という違和感
実体験で言えば、鉄道趣味の男性と、鉄道趣味の私(女性)が初めて会うと、まず「鉄道が好きなんです」的な会話で始まる。すると相手は「どんな鉄道趣味なのか」の事情聴取を行い、最終的に「この人は本物だ!」と判断を下していただく。
別の実体験もある。鉄道趣味の人と鉄道談義をしていたとき、ふいにその人が「あなたとしゃべっていると、女性と話している感じがしない」とのたまった。その人にとって、女性には「教えてあげるもの」という雰囲気が漂っていないといけないのだろう。そこには男女の感情の作用もあるのかもしれないが。
ごくごく個人的なことであるが、今年の1月に私はJR全線完乗を達成した。「JR全線完乗」というのは大変便利な6文字で、葵の御紋のようなものだ。このお陰をもってして、乗り鉄談義がスムーズに進むようになったのだが、一方で、あまりにも驚嘆のまなざしで見られると、懐かしき悪しきことば「女だてらに」が鉄道趣味の世界ではまだまだ現役なんだなあと思ってしまう。また、完乗をもってしても、「乗り鉄の蜂谷さん」と言われることはほとんどなく、相も変わらず「女子鉄の蜂谷さん」だったりする。
悲しい実体験もある。「男性にモテたいから鉄道好きといっているのだろう」と陰で言われることである。これについては発言する男性の自己評価が高すぎるのではなかろうかと思う。本当にそうであるならば、女性側は「鉄道趣味の男性からモテたい」という計算が働いている必要があるのだが、そういう女性がどれだけおられるのだろうか。単純に男性からモテたいのであれは、「鉄道好きなんです!」と言うよりも、女性誌やらなんやらでモテテク、モテファッション、モテメイクを学んだほうが手っ取り早い。
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