AIで「一般的な労働者の給料が上がる」ロジック 労働者側の経済学者が説く逆説の「AI楽観論」

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全米経済研究所(NBER)でも刊行された最新リポートでオーターは、AIが人間の判断力を完全に代替できる可能性は高くないとしている。そして、医療、ソフトウェア、教育、法律相談などの需要はほぼ無限にあり、コストが下がれば製品やサービスを利用できる人がさらに広がり、こうした分野が拡大するはずだとみている。

これは、イーロン・マスクらが予見した雇用の終末とはまったく異なる、別の道を歩むための「予測ではなく、主張だ」とオーターは言う。

これまで、コンピューターはルールに従うようにプログラムされていた。コンピューターは絶え間なく改良され、より速く、より安くなった。そしてオフィスや工場での定型作業は、ステップ・バイ・ステップのルールに落とし込まれ、一段と自動化が進んできている。このような仕事は通常、4年制大学の学位を持たないミドルスキル労働者によって行われていた。

AIヘルパーという「労働者補完テクノロジー」

これとは対照的にAIは膨大なデータ、つまりインターネット上の事実上すべてのテキスト、画像、ソフトウェアコードを基に訓練される。オープンAIの「ChatGPT(チャットGPT)」やグーグルの「Gemini(ジェミニ)」のような強力なAIチャットボットは、指示されれば、報告書やコンピュータープログラムを生成したり、質問に答えたりすることができる。

オーターによれば、「AIはルールを知らない。AIは大量の事例を吸収して学習する。これまでのコンピューティングとはまったく異なるものだ」。

学習事例を蓄積したAIはヘルパー(助手)として、「ガイダンス」(医療では、これを診断と見なしているのでは?)や(この2つの薬を一緒に処方しないように、といった)「ガードレール」を提供することができる、とオーターは語った。

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