「歳をとれば脳の働きは弱まる」と思う人の大誤解 新しい情報を入れれば一生に渡り変化し続ける

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加齢と知能の関係については、多くの研究がなされるようになってきました。そして、数々の発見がなされています。例えば、知能について、次の2つの脳を区別するという考えが、ホーンとキャッテルという2人の学者によって提唱されました(西田裕紀子「高齢期における知能の加齢変化」健康長寿ネット、長寿科学振興財団、2019年2月1日)。

2つの区別とは、「結晶性知能」と、「流動性知能」との区別です。

結晶性知能とは、個人の長期間にわたる経験や、教育や学習を通じて獲得した知能です。これは、言語能力や、理解力、あるいは洞察力に関連しています。それに対して、流動性知能とは、新しい情報を獲得し、それを処理して操作していく能力です。

ホーンとキャッテルは、流動性知能は年齢とともに低下していくが、結晶性知能は、60歳頃まで上昇を続けて、その後も、ほとんど低下しないことを見出しました。

例えば、言葉を操る能力は結晶性知能に関連しているため、高齢者になっても、高い水準を維持できるのです。つまり、年齢を加えるのは、ポジティブな意味を持っているということになります。これも、高齢者にとっては、大いに励みになる研究結果です。

勉強は何歳から始めてもよい

高齢者の脳の研究は、日本でもなされています。東北大学の加齢医学研究所の瀧靖之教授は、脳のMRI画像の分析を行うことによって、認知症の発生の予防を研究しています(「脳のパフォーマンス最大に 脳医学者お薦めの勉強法」NIKKEI STYLE、2018年12月6日。「シニアの勉強法、予復習で効果的に 何歳から始めても大丈夫」100歳時代、ライフプラン 産経新聞、2022年8月3日)。

大人の脳も、子供の脳と同じように成長することができるということが、重要な発見です。新しいことを学ぶと、脳に情報伝達の回路ができる。勉強を続ける限り、そのような回路が確実に増えて、そして、新しい能力を身につけることができるというのです。だから、勉強は、何歳になって行っても有効なものだということになります。

これは、すでに述べた、海外での研究と同じような結果です。

「勉強したいと思うけれども、近頃物忘れが激しくなって」と心配している高齢者にとって、瀧教授の研究結果は誠に朗報です。こうした研究に力づけられて、ぜひ積極的に勉強を進めていくことにしましょう。

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