無印良品「欧州で破産」報道から見る変化の現実 欧州より東アジア、国内も都会では「飽き」?

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

英・ガーディアン紙の記事「無印良品ヨーロッパ、英国の主要繁華街の苦境で管財人を任命へ」によると、「日本の衣料品・家庭用品小売業、無印良品のヨーロッパ部門が管財人を選任することになり、苦境にあえぐ英国の主要繁華街にまた暗い兆しが見えてきた。ロンドンに6店舗、バーミンガムに1店舗を構える小売業者の広報担当者は、この動きは『計画的な戦略的事業再編』の一環であり、まもなく合意に達する見込みだと述べた。同社は、このプロセスが店舗やスタッフ、チェーン運営全般に直ちに影響を与えることはないと強調した」とのこと(和訳は筆者による)。

一見センセーショナルに映る「破産」という文言。運営元である良品計画も、3月25日には「特定子会社の異動に関するお知らせ」というリリースで、MUJI EuropeLimitedへの20,000,000英ポンド(約38億円)もの増資をひっそり(?)発表している。

日本とは法律も違うはずなので、「破産申請をしたのか、これから入るのか」を、担当編集経由で良品計画に問い合わせたところ、「英国民事再生手続きに掛かる財産管理人の候補者選定をした」「ただ、欧州からの撤退ではない」とのことだった。

ゆえに、なかなか表現が難しいところなのだが、筆者としてはそこまで深刻に受け止める必要はないだろうと考えている。

というのも、最新の決算資料を見ると、無印良品は国内587店舗、海外643店舗と、海外を主軸とする企業になっている。特に東アジアには494店舗を展開しており、近年の出店もその地域に集中している。

その一方で、欧米は55店舗。2020年には、アメリカ事業を展開する連結子会社「MUJI U.S.A. Limited」がアメリカで破綻したことも話題になった。

日本では「おしゃれな生活雑貨店」として確固たる地位を築いた無印良品だが、欧米での影響力は限定的で、東アジアへの販路拡大にシフトしていたのだ(店舗数はいずれも2023年11月末時点、2024年8月期第1四半期決算説明会資料による)。

2024年8月期第1四半期決算説明会資料
欧米事業が占める割合は少ない。ので、欧州子会社が不振でも、大きな問題はなさそうだ(画像:「2024年8月期第1四半期決算説明会資料」より)

また、ガーディアン紙の報道からは、イギリスの小売業界全体が厳しい局面にあることもうかがえる。記事によれば「このニュースは、一連の有名小売店が苦境に立たされたことに続くものだ。ザ・ボディショップは2月に管財人を呼ぶと発表し、その後英国内の店舗の半分近くを閉鎖すると発表した。今月には、ファッション・ブランド、テッド・ベーカーを運営する会社が管財人を選任し、英国内の46店舗で数百人の雇用が危機にさらされている」という。無印良品だけが取り立てて不調なわけではないようだ。

既存店の改革を打ち続ける

とはいえ、無印良品(を運営する良品計画)が、何らかの次の一手を打たなければならない局面にあることは間違いない。実際、同社の営業利益は下がっていて、2018年2月期に記録した45,286百万円を、その後は超えられていない。売上高は順調に成長しているにもかかわらずだ。

次ページ都市部ではテコ入れが進んでいる模様
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事