カロリー削れば太らないと頑張る人を裏切る真実 エネルギーが過剰だから体脂肪が蓄積するのではない
私たちはレーザービームのように創造力をカロリーという一点に集中させ、道路を渡ろうとする亀のように根気強くカロリーを減らしてきた。
その結果どうなっただろうか。暑い夏の日の朝霧が晴れていくように、肥満問題は消えていっただろうか。
答えは「ノー」だ。カロリーを減らせばいいというアドバイスの根底にあった前提は、エネルギー摂取(カロリー摂取)とエネルギー消費(カロリー消費)と脂肪の蓄積は、それぞれが独立した変数であり、意識的にコントロールすることができる、というものだ。
「私たちの体を正常な状態に保つために使われるカロリーは、つねに一定で変わらない」という仮定のもとに考えられたアドバイスだ。
だが、これは誤りである。
基礎代謝率は「40%」も上下する
じつは、体は基礎代謝率──心臓の拍動、肺の呼吸、腎臓や肝臓の解毒作用、脳による思考、体熱の発生などに必要なエネルギー──を40%も上げたり下げたりして調節することができる。摂取カロリーを減らしても、体がカロリーの消費を抑えようとして活動が鈍くなるだけで、体重が減るわけではない。
さらに、摂取カロリーと消費カロリーの差が体脂肪になるという考え方は、重複して働く満腹ホルモンや飢餓ホルモンの働きをまったく考慮に入れていない。
私たちは何をいつ食べるかを自分で決めることはできても、空腹を感じることをやめることはできない。いつカロリーを燃やして体熱を発生させ、いつカロリーを脂肪として蓄積するかを自分で決めることはできない。
それを決めるのはホルモンだ。だから、「まずはカロリーを減らそう」というアドバイスでは、私たちがどんなに頑張ったところで効果は出ないのだ。
1970年代に始まった2型糖尿病の嵐は、それから40年経ったいま、猛烈なハリケーンとなって世界中をのみこみ、疾患と障害を広めている。
脂質とカロリーを減らそうという輝かしいアドバイスを尻目に、これほど急速に肥満が広がったのはなぜなのか。考えられる可能性はふたつしかない。
アドバイスはよかったのに、人々がそれに従わなかったのか。それとも、たんにアドバイスが間違っていたのか。