日産の新中計「3年間で100万台増販」の現実味 成長戦略を打ち出すが部品会社からは厳しい声

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前出のサプライヤー首脳は「この2~3年、日産からは年間400万台の生産計画を伝えられていたが下方修正し続けていた。台数については保守的に見ざるを得ない」と冷ややかだ。日産との取引が多い別のサプライヤーの経営企画部長も「日産さんの数字をそのまま信用するとひどい目に合うので、8割といった数字で考えないといけない」と切り捨てる。

日産が強気の台数目標を打ち出すには、そうせざるを得ない事情がある。

ゴーン時代の拡大戦略の結果、グローバルでの年間生産能力は一時、720万台まで膨れ上がった。その後、インドネシアやスペインで工場を閉鎖し生産能力は540万台まで減らしたが、販売台数も2017年度の577万台から2023年度(見込み)の355万台まで低下したことで生産台数が減少。足元の平均稼働率は68%と低迷している。

サプライチェーンを含めて地域経済への影響が大きいため、自動車工場の閉鎖は簡単には実行できない。稼働率を改善するには生産・販売台数を引き上げるしかない。

ただ、能力過剰が顕著な中国は販売台数が20万台の増加では十分な改善とならない。このため、2025年から中国生産車の輸出を開始。第1弾として10万台規模の輸出を目指す。さらに合弁パートナーと生産能力の「最適化を検討する」ともいう。

生産技術を担当する坂本秀行副社長は「2026年は(平均稼働率が)91%に上がる」と説明している。100万台の販売増で稼働率91%となるには生産能力を500万台規模に減らす必要がある。中国だけとは限らないが、40万台規模の生産能力削減を行うのかもしれない。

問われる実行力

中計達成には新型車が目論見通り売れる必要があるが、それ以前に、新型車を計画通り投入できるかが問題となる。

2年前に発売開始したEV「アリア」は生産に手間取り、今年3月上旬まで日本で受注停止が続き販売機会を逃した。東海東京インテリジェンス・ラボの杉浦誠司シニアアナリストは「ゴーン会長時代から新車の投入の計画が遅れることがよくあった。新規車種をタイムリーに投入できるかがカギになる」と指摘する。

ホンダとの協業は検討が始まったばかり(撮影:尾形文繁)

また、EVコストの現行比30%の削減や次世代生産方式の導入、自動運転技術の開発、モビリティサービスやエネルギーマネジメントサービスといった多方面の戦略を打ち出した。これらの実現にルノーや三菱自動車とのアライアンス、先日発表したホンダとの協業などのパートナーシップを活用していく方針も示した。

説明会で内田社長は「これまでのやり方を続けていては成功できない。抜本的な改革が必要で、中期的にやることは明確だ」と語った。確かに、これまでの日産のやり方では新中計も未達に終わる可能性が高い。やるべきこと、抜本改革を実行できるかにかかっている。

井上 沙耶 東洋経済 記者

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いのうえ さや / Saya Inoue

自動車業界を担当後、現在は専門店やアパレルなど小売業界を担当。大学時代は写真部に所属。趣味は漫画を読むこと、映画のサントラを聴くこと。

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