小林製薬の「紅麹問題」初動対応の"致命的な欠点" リスク広報から見て何が悪かったのか?

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

記者会見では、小林製薬「本来はもっと早く報告すべきだったが、何が原因か分からず、できるだけ広く可能性を調べた」と説明。小林製薬がサプリに使われた原料などのデータを調べたところ、「未知の成分」の存在を示す分析結果が出たという。

要するに、「原因が分からなかったから」というのが、報告が遅れた理由である。一般的には、問題が発生したときには下記のようなプロセスをとる。

1. 事実確認

2. 事実関係と対応策の発表

3. 問題への対応

1に時間がかかったため、2ができなかったという説明になる。この問題を一般化すると「原因不明の問題が起き、事実確認に時間がかかる場合にどう対応するか?」となる。

では、こうしたケースではどう対応するのが適切なのだろうか?

どのタイミングで何を報告するのか?

症例が発覚した時点で、紅麹が原因で健康被害が起きた可能性があることをすみやかに公表し、被害を及ぼす可能性がある商品すべてを自主回収する――。供給先が173社もあるとされる中、「原因は不明ですが、紅麹を使った製品は全て回収してください」と取引先に強制することが簡単でないことはわかるものの、とはいえ、死亡事例が出るような事態を2カ月近く開示しなかったことがよかったとは思えない。

もし、健康被害の原因が紅麹ではなかった場合どうなるか?と想像してみるとどうなるか。

自主回収、廃棄のコストがかかってしまうし、売れたはずの商品を売らずに廃棄することで、機会損失も生じる。それ以上に、企業イメージ、商品イメージ低下のリスクも生じる。影響の大きさを考えれば、情報開示に尻込みしがちになってしまうのも理解はできなくはない。

筆者は理系(物理学)の大学院を出ているが、現代科学は細分化、高度化が進んでおり、同じ分野でも専門分野が少し違うだけで研究内容が理解できなくなる。

医学、薬学、化学の応用化学は、人の健康、安全に重要な影響を及ぼす分野だが、実際に健康被害が起きた時に、因果関係を特定することや、解決策を講じることに困難が生じることも実際に起こりうる。

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事