専門家が指摘「紅麹問題」で表出する"重要な視点" 2014年には欧州でサプリによる健康被害の報告

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「今回の問題は、紅麹そのものを原材料とした健康食品を、長期間にわたって継続して摂取していたのか、あるいは製造過程で意図しない有害物質が生成または混入したことなどが問題ではないかと考えています」

こう指摘するのは、東京家政大学大学院客員教授の宮尾茂雄さんだ。

消費者庁によると、今回の事件は、2015年の機能性表示食品の制度開始後、メーカーが健康被害を公表して自主回収する最初のケース。国は届け出があるすべての機能性食品6000件超を緊急点検するとしている。

問題の健康食品は、紅麹を“色素”としてではなく“食品原料”として使用している。色素に比べると紅麹の含有量が多く、それだけたくさんの量を1回で摂取することになる。

そもそも健康食品やサプリメントは、特定の有用成分を濃縮して作られたもので、健康増進を期待して継続的に摂取することが多いものだ。

「紅麹に限らず、健康食品やサプリメントのなかには、主成分だけでなく、副成分も含めた特定の成分を、継続的に長期間摂取することが体にどんな影響を及ぼすのか、まだまだ調べる必要があると思います。何か特定の成分を、濃縮した形で毎日摂取し続けるというのは、食品ではありえず、健康食品やサプリメントでは起こりうる可能性がある」

と宮尾さんは言う。

特に機能性の表示が認められている機能性表示食品は、“体に良い効果”がうたわれるため、継続的な摂取に疑問を持たない人が多く、「食品だから安心」と過剰摂取をしている人もいるかもしれない。

「メーカーとしてはさまざまな新商品を作っていますが、副作用的な面の検証がおろそかになっていないか、少なくとも機能性表示食品については、今一度、全体的にしっかり検証することが必要だと思います」(宮尾さん)

2014年にも健康被害が報告

内閣府の食品安全委員会によれば、「血中のコレステロール値を正常に保つ」として、ヨーロッパや日本などで販売されている「紅麹で発酵させた米に由来するサプリメント」の摂取が原因と疑われる健康被害は、2014年にヨーロッパで報告されている。

これを受け、前述したようにECでは一部の紅麹菌が生産するカビ毒、シトリニンのサプリメント中の基準値を設定。フランスでは摂取前に医師に相談するように注意喚起しており、スイスでは紅麹を成分とする製品は、食品としても薬品としても売買は違法とされている。

こうした背景がある成分を、機能性表示食品として使用する際のリスク検証が十分だったのか、改めて問われるだろう。

松岡 かすみ フリーランス記者

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まつおかかすみ / Kasumi Matsuoka

1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、出版社勤務を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。著書『ルポ 出稼ぎ日本人風俗嬢』(朝日新書)

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