事業部の説明に納得しない経営陣は、「事業部が示していないシナリオと、重要仮説を知りたい」という新たなリクエストを経営企画部に出した。
経営陣のリクエストに応えるために、A社の経営企画部は2カ月ほどの期間で新たな事業戦略の重要仮説の分析を行い、複数のシナリオと、それぞれのシナリオの重要仮説を報告した。報告を受けた経営陣からは、「よくわかりました」とフィードバックがあった。
その後、A社の経営陣は、この事業への追加投資を決定した。実は、追加投資を実行する戦略は事業部から説明されていたのだが、その時点では、具体的な行動に至らなかった。売り上げや利益等の財務目標を示されても、どうしたらその目標を実現できるのか、経営陣が腹落ちできなかったからである。
リスクテイクを伴う事業戦略は、関係者が相当強く腹落ちしないと、実行されない。この事例では、関係者の腹落ち感を高めるために、重要仮説の明確化が役立った。仮説は、戦略目標を達成するために何をすべきか、という具体的かつ低リスクの行動指針を示す。
実現すべき重要仮説が合意されたことが、事業環境の変化に対する具体的な行動を引き起こしたのである。A社は2023年3月期に最高益を達成したが、本事業はさらなる成長を予測している。
愚直に質問を重ねるしくみ
社会インフラ企業B社では、自由化によって主力事業がいずれ儲からなくなることが経営課題となっていた。そこで、主力事業以外の事業を立ち上げることを経営ビジョンとして打ち出した。
この経営ビジョンは緊張感に満ちたもので、B社の社員は自分たちの生き残りがかかっていることを理解した。しだいに新事業の提案が経営陣に示されるようになり、そこまではよかったのだが、大きな問題に直面した。
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