米国の政策失敗に学んだ中国は先進国をまねない--A.T.カーニーCEO ポール・ラウディシナ
──微妙な移行期間の中では政策課題やリスクも異なってきますが、それらを解決できますか。
中国は過去20年間インフラ投資に終始したが、これからは年金、医療、教育といった社会資本整備に注力しなければいけない時代に入った。それも、社会的なセーフティネットが未整備のまま高齢化が進んできており、政府への依存度が高まっているという問題がある。
また、低コストの製造拠点という位置付けから、イノベーションを中心とした高付加価値の創出できる経済圏へ移行すべきという大きな課題もある。ただ、このような問題は12次5カ年計画の政策目標にすでに取り上げられており、中国は問題を解決していくと見ている。
米国経済回復の3つの要因
──米国経済の回復が遅れるのではないかとの懸念があります。米国の景気動向をどう見ていますか。
米国の消費者が陶酔感に浸って、将来は明るいと思うためには三つの要因が必要です。
まず、住宅市場。個人が豊かさを実感するうえで住宅市場は非常に重要なものだが、依然として在庫の過剰感があり、低迷している。
それから、住宅市場の低迷が2番目の要素、失業や雇用問題にマイナスの影響を与えています。なぜかといえば、自分の住宅を売却することができない人は、雇用があるほかの地域に移り住めないので、本来、米国経済の強みの一つである労働の流動性が、住宅市場の低迷によって阻害されているわけです。
3番目の要因は個人向け金融の問題で、これも改善が見られない。銀行はリスク回避志向が非常に高まったままで、消費者に対する信用供与を渋る傾向がある。