つくたべやワタサバ「NHK夜ドラ」ヒットの背景 平日「夜の15分ドラマ」製作の狙いを聞いた

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本作は国内だけでなく、海外からの反響も大きいという。フランス・カンヌで毎年開催される世界最大の国際テレビ見本市MIPCOMでは、LGBTQIA+部門のファイナリストに選出された。

同作シーズン1は、料理を作って食べることがメインであり、女性2人の半径5メートルの生活を映し出し、2人の世界観にふわっと入っていけるストーリーだった。

シーズン2では、その空気感をそのままに、性的マイノリティが社会で直面するセクシャリティ問題や、家族、友人関係にも踏み込んだ、社会性の高い物語になった。シーズン2では、“気楽に見られる”「夜ドラ」の中でも、視聴者が考えさせられるような場面もあったが、いまの時代を切り取った女性たちの生き方に共感が集まり、シーズン2は、総合視聴率、NHKプラス、いずれも「夜ドラ」枠で最高の数字になったという。

シーズン2の最終回放送時には、シーズン3への待望の声がSNSなどに湧き上がっていたが、いまのところシーズン3は計画されていないと言う。

「3があるかどうかは制作サイドともこれから検討すると思いますが、続編を求める声が上がるのは、NHKとして大変嬉しいです」(手塚氏)

視聴スタイルが多様化する

こうした名作と呼べる人気作を重ねていくことで、「夜ドラ」というブランドは確固たるものに育ちつつある。

手塚氏は、「『夜ドラ』のインスタグラムのアカウントには、ドラマが変わってもずっとフォローしていただけるファンの方が少しずつ増えています。枠として楽しみにしてくださる方が一定数いて、期待を感じています」と笑顔を見せる。

NHK 夜ドラ つくたべ
NHKメディア総局・メディア編成センターの小西智仁氏、手塚有紀氏(写真:筆者撮影)

そんな「夜ドラ」の現在地を聞くと、知名度が徐々に上がりつつあるとはいえ、小西氏は「まだまだ認知が十分とは思っていません」と分析する。

「NHKプラスなどで朝の通勤中にご覧になる方も多くいらっしゃいますし、いろいろな視聴スタイルがあると思います。『夜ドラ』という枠の浸透が成功なのかという考え方も含めて、そのあり方を探っているところです」(小西氏)

映像メディアがあふれかえり、視聴スタイルが多様化する現在。Z世代をはじめ若い層においては、リアルタイムでドラマを視聴する人は少数派になるだろう。また、「夜ドラ」は月曜〜木曜の回を金曜にまとめて放送しており、ふつうのサイズのドラマとしても見ることができる。

であれば、夜の帯枠という意義はどこにあるのか。

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