上白石萌歌「姉は一番身近な、他にはない存在」 「ネガティブな気持ちに覆われたらもったいない」

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▲ 右手リング2万5300円/FUMIE TANAKA(DO-LE co ltd.)(写真:内田裕介(タイズブリック))

── 錚々たる共演者の中で最年少とのことですが、ベテランの方々とのお仕事はいかがですか?

上白石:先輩方から学ばせていただくことが凄く好きなので、なるべく最年少にしがみついていたい気持ちが正直あります(笑)。本当に経験豊富な、百戦錬磨の方々の中での3年ぶりの舞台ですから、当然できないこともあるでしょうし、「周りに比べたらずいぶん劣ってるな、自分」と思うこともたくさん出てくるでしょうけど、最初から学び直すつもりで稽古場に行けたらいいなと思っています。

── これまでは学業と仕事の両立が大変だったと思いますが、昨年、大学を卒業して仕事だけになった今はどのような気持ちでしょう。

上白石:すごく解放されるかなと思ったんですけど、寂しさの方が残りました。お仕事を始めた10代からずっと生活の一部だった学校がなくなった途端に、すごく、何だろう、心もとないと言いますか……。例えば病院の問診票には今まで学生に丸をつけていたけれど、何て書けばいいんだろうとか。アイデンティティのひとつを失うくらいの心細さがあったんですが、一方で“自分は表現の仕事をやっていくんだ”という覚悟がより強まったような気はしています。

フィルムには時間や記憶、いろんなものが宿っている

── 先日はご自身で撮られた作品などの写真展※も開催されましたね。

上白石:はい、写真展は初めての試みだったんですが、とてつもないインプットとなりました。展示に足を運んでくださった方の中には「フィルム(撮影)を始めてみようと思った」などと言ってくださる方もいて、表現が伝染していくのっていいなと思いました。

── 写真は以前から趣味で撮られていたんですか?

上白石:父親がずっと私たちのことをカメラで撮ってくれていたので、父のカメラ借りて撮ることはよくしていました。父は基本的にデジタルですけど、私たちが幼い頃はフィルムもまだ安く、気軽に撮っていたみたいです。

ある日カメラに眠ってたフィルムを父が見つけて、それを現像してくれたんです。そこには幼い日の自分や姉、母が映っていて、なんというか、フィルムには時間とか記憶とか、いろんなものが宿っている気がして、その時からずっとフィルムが大好きなんです。

※「かぜとわたしはうつろう」。上白石さんが友人の女優・八木莉可子さんを撮り、共鳴するふたりの世界をさらに写真家・野口花梨さんが撮り下ろし、そこに歌人の伊藤紺さんが言葉を添えた展覧会。

(写真:内田裕介(タイズブリック))

── 今後も面白い出会いがあれば、新しいことにどんどんチャレンジしていきたい?

上白石:もちろんです。表現のお仕事をすると共に、クリエイティブなことを常にやっていたいという気持ちがあって。歌もそのひとつですが、これからも形を選ばず、自分が面白いと思ったことは全部やっていきたいんです。今、誰もが肩書などにとらわれず表現をしていける、ボーダーレスな時代になってきていると感じています。マルチでやりたいと思ったことはないですが、目の前にある面白いことはずっとやっていけたらいいなと思っています。

── 忙しい日々の中で、息抜きはできていますか。

上白石:映画や演劇を観るとか、美術館に足を運ぶとか、結局息抜きもエンタメです(笑)。エンタメで凹み、その凹みを埋めてくれるのもエンタメ。私は本当に表現が好きなんだなと最近とても実感しています。日々のアンテナがダイレクトに自分のお仕事につながっていると思うので、なるべく気になる展示とか演劇には足を運んでいます。クリエイティブな仲間がたくさんいるのですが、「みんなで楽しいことができたらいいよね」って話し合う、そういう刺激も安らぎの時間です。

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