「尊敬するお子さま」は金正恩の後継者なのか? 父娘のツーショット写真を公開する政治的意図
「嚮導」の偉大な方々
金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の娘の存在感は、ますます大きなものになってきた。朝鮮労働党機関紙『労働新聞』の2024年3月16日付に、「嚮導(きょうどう)の偉大な方々」という表現が出てきたのである。「嚮導」は日本語で聞きなれない言葉かもしれないが、「領導」と似たニュアンスで、北朝鮮では最高指導者か朝鮮労働党が主語となって使われてきた。今回の注目点は「嚮導の偉大な方々」と複数形になっていることである。
「先進的」な「世界屈指の野菜生産基地」である温室の完工式に金正恩が出席したことを伝える記事で、「嚮導の偉大な方々が、党と政府、軍部の幹部とともに江東(カンドン)総合温室をご覧になった」と書かれていた。この表現だと、「偉大な方々」は「党と政府、軍部の幹部」より上位の特別な人物ということになる。しかも、複数形ということは、金正恩だけではないということで、該当するのは娘しかいない。
金正恩の動静を伝える北朝鮮メディアは今年1月以降、「お子さま」が主語となる文を記事中で使うようになった。以前は「敬愛する金正恩同志が愛するお子さまとともに……を視察された」などと表現されていたのだが、これが「尊敬するお子さまが同行された」という独立した一文に変わったのである。内閣総理ら他の随行幹部の名はその後に列挙されている。
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