現在アパは11万7000室を保有し、全国のホテル、旅館の約8%を占めている。そして、2027年3月期には約10%、最終的には20%の寡占を目指して拡大中だ。けれど、独立系ホテルが減って大手チェーンによる寡占化が進む中、たとえ20%に到達したとしても、それ以上の成長は難しいと予測したのだ。
そこで目を向けたのが北米だった。他チェーンはアジアに展開している事例が多いなかで、北米を選んだのはブランディングの観点からだ。
「日本人には昔から、老舗企業へのリスペクトと西洋ブランドの憧れ、2つの性質があります。自分へのご褒美を買うときも、ルイ・ヴィトンのバッグやベンツなど、西洋ブランドを選ぶ人は多いですよね。だからコーストを欧米でしっかり根付かせることがブランディングになり、グループ全体のイメージの向上にもつながると考えたのです」(元谷氏)
将来的には、アパよりも客室単価の高いラグジュアリーブランドとしての逆輸入、さらには北米以外の海外への展開も考えている。トヨタのレクサスのような、ハイエンド向けのブランドを目指しているのだ。日本への逆輸入のタイミングはいつ頃かと尋ねると、「コーストホテルが北米No.1の客室数まで拡大したとき」と、毅然とした答えが返ってきた。
日本の人口減も、北米進出の背景だ
一方で、北米進出の背景には日本の人口減もある。2023年だけで、人口の減少は80万人を超えた。出生数が減り、死亡者総数が増えているからだ。そのため、ビジネスでも観光でも、宿泊ニーズは少しずつ減っている。これを補うのはインバウンドであり、そこをどれだけ取り込めるかが宿泊事業のカギになってくることは間違いないだろう。
他方、アメリカやカナダは人口が増えており、観光、ビジネス需要も高い。つまり北米市場で実績を重ね、知名度を高めることは、国内外でのリスクヘッジとなるのだ。
アパの2027年までの中長期計画では、コーストの当面の目標は、1万室への拡大だ。コースト(Coast)とは英語で海岸の意味。その名の通り西海岸沿い、シアトルやポートランド、サンフランシスコ、サンディエゴなど大都市圏を中心に拡大を考えているという。
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