「大量閉店」イトーヨーカ堂の運命を握る店の正体 時代の流れには勝てなかった総合スーパーの転機
なぜ、食品の売り上げが、あまり減らなかったのかと言えば、それは食品購入が生活ルーティーンの一部であり、店を選ぶときの選択基準は、近いこと、または、1カ所で揃う品揃えがあることで、「タイパ重視」となっていることによる。地域の動線の中心にある場所、つまり食品購入においては、立地が良くて十分な品揃えがあれば、それなりにお客さんに来てもらえる、ということである。
首都圏でアドバンテージを持つヨーカ堂
この点で、東京発祥の老舗スーパーであるイトーヨーカ堂は大きなアドバンテージを持っていた。世界有数の公共交通網を誇る首都圏中心部において先行者利益を持ち、乗降客数が多い駅前をはじめとする動線の要所を押さえている。そんな優良立地に広い売り場を展開しているイトーヨーカ堂の食品売り場は、首都圏の顧客にとっても十分便利な存在であり続けたのである。
クルマ社会化した地方や郊外においては、こうはいかない。クルマが主要な移動手段となっている地域では、機動力を持っている消費者の行動範囲は首都圏の何十倍も広く、その中にあるスーパーはすべて競合になるという厳しい競争環境だ。
しかし、首都圏の勤労者世帯にとって、平日は駅(もしくは最寄りのバス停)から家への動線上に立地していることが、圧倒的に有利に働く。イオンの「まいばすけっと」という最低限の品揃えしかないミニスーパーが、東京区部から京浜間のみに展開して、2000億円企業にまで成長できたのも、こうした事情が背景にある。
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