綿菓子製造機の移動販売がゲーム全盛期への道築いた--カプコン会長兼CEO 辻本憲三[下]
以来、カリスマプロデューサーに対しても予算進捗を厳しくチェックし、暴走を防いできた。4年前にCEOとCOOの業務を分担するまで、「経営を半分置き去りにしてきた」と振り返る辻本。事実、CEOになって初めて、会社全体を俯瞰できるようになったと思っている。
転換点迎えるゲーム業界 「僕らの時代」という自信
池森は、三つ年下の辻本を「経営者としては兄貴」と慕う。「ゲームはともかくワインでも『最上級を目指す』と公言するのはすごい。同じ経営者として刺激を受ける」。
米国カリフォルニア州ナパ。ここに、辻本の四つ目の会社「ケンゾーエステイト」のワイナリーがある。カプコンの事業失敗で遊休地化した土地を、辻本個人が買い取ってワインの新ブランドを立ち上げた。「早く引退したい。無罪放免にしてくれ」と笑いながら、仕事と学業をこなした高校時代と同じように、ゲームとワイン、二足のわらじを履く。
「(ワイン会社は)個人事業だからクールには眺めるけれど」と前置きしたうえで、カプコン取締役の小田民雄は言う。「一つ成功したらまた別のチャレンジをするという“無謀”な人は、世の中に必要ですよね。そういう会長の激しさに、われわれ経営陣も刺激を受ける。今満足したらいかん、変えるべきだ、と。これだけの大所帯を変えるというのは、激しい改革にほかならないが」。
ゲーム業界には今、大きな変化が訪れている。従来のパッケージ売り切り型に代わり、SNS(交流サイト)のソーシャルゲームなど、ダウンロード型のビジネスが台頭し始めた。時流を見極め、うまく乗りこなさなければならない。小田が言った組織の大改革も、ダウンロード型市場に対する開発の強化だ。