綿菓子製造機の移動販売がゲーム全盛期への道築いた--カプコン会長兼CEO 辻本憲三[下]

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辻本は回顧する。「世の中には、すばらしい人がいてね」。それは、喫茶店に出入りしていた「おしぼり屋」だという。使い捨てではない、白いタオル製のおしぼりを、彼らは回収しきれいに洗ってまた納入する。他人が手や顔をふいたおしぼり。単価も驚くほど安い。ある日、顔見知りのおしぼり屋に、「インベーダーは儲かる商売だ。やらないか」と持ちかけた。すると、「自分らの本業ができなくなるから手を出しません、と言われた。おしぼり屋の商売は(ブームと無関係に)今も続いている。適正な価格でうんとサービスすると、ほかに対抗できる者がいなくなる。あの人たちの信念はすばらしかった」。

その後辻本は、業績不振などを理由に自ら作ったアイ・ピー・エムを追い出され、1年後、カプコン創業に至る。大会社となった今でも、あのときのおしぼり屋の言葉を肝に銘じている。「自分たちの得意なことに集中するというのが、僕の考える“身の丈”。身の丈そのものが大きくなればいい。投資も借金も、すべて身の丈の範囲内でやる」。それはM&Aなどに頼った成長ではなく、カプコン自身のソフト開発力やマーケティング力を磨き上げることで身の丈を最大化するという決意である。

40代長男を社長に登用 突き付ける覚悟

苦しみや悲しみ、喜びをぐっと胸にため込み、決して表には出さない男になったのも、原点にはこうした紆余曲折があったのかもしれない。さまざまな感情を総じて、辻本は「焔(ほむら)」と表現する。焔、すなわち燃え盛る炎は、ねたみや怒りだけでなく、喜びや感謝も含んでいる。唇をかんでため込んだ焔を「ここぞ」というタイミングで一気に吐き出せば、大きなエネルギーになる──。これが辻本がたどり着いた信条だ。

カプコンが大阪証券取引所第2部に上場を果たした4年後。当時、ボストン・コンサルティング・グループ日本代表だった堀紘一(現ドリームインキュベータ会長)の元に、1本の電話がかかってきた。

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