AI技術で「人が死なない時代」が来ることの"暗雲" 診察室は無人に、誤診は限りなくゼロに近づく

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ロコモティブ・シンドローム(運動器障害のために移動機能が低下した状態)のリスクも、50代から大きくなります。 

しかし、現代は致死的な病気でも治せるものが増え、日本人の体力も向上しました。医療技術の進化はとどまるところを知らず、そのスピードは加速しています。そのため、臓器の耐用年数を超えて、多くの人が80歳、90歳、100歳と長生きするようになりました。

今以上に健康維持のための理想的な環境が整えば、今はまだ簡単ではないですが、120歳を迎えられる人は増える可能性があります。

しかし「人間はいつか死ぬ」

ただし、人間はいつか必ず死にます。人生の終わりの瞬間に向かって身体が老化していくのは不可避です。現代は病気でなかなか死なない時代ではありますが、不老時代になったわけではありません。

『死に方のダンドリ』(ポプラ新書)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

2020年に「老化は治療できる病である」とするハーバード大学医学大学院教授のデビッド・A・シンクレア博士の著書『LIFE SPAN 老いなき世界』(東洋経済新報社)が刊行され、話題となりました。このように老化を病気とみなして治療しようとする研究も進んでいます。

ただ、そのような研究の結果として老化を治療する薬ができたとしても、非常に薬価は高額で、健康保険では当然カバーできず自費診療となります。その恩恵にあずかれるのは、ごく一部の富裕層だけです。

そして、ここからが肝心なのですが、仮にその老化の治療薬で寿命が数十年延びたとしても、いつかは死が訪れるのです。

また、延びた分の数十年の間にまったく身体の不調がないことは考えにくく、そのときは病院や普通の薬に頼ることになるでしょう。寿命が延びたら延びたぶんだけ、生涯に使う医療費は増えるのです。

奥 真也 医療未来学者・医師

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おく しんや / Shinya Oku

1962年大阪府生まれ。医療未来学者、医師、医学博士。経営学修士(MBA)。大阪府立北野高校、東京大学医学部医学科卒。英レスター大学経営大学院修了。東京大学医学部附属病院放射線科に入局後、フランス国立医学研究所に留学、会津大学先端情報科学研究センター教授などを務める。その後、製薬会社、医療機器メーカーなどに勤務。著書に『未来の医療年表』(講談社現代新書)、『医療貧国ニッポン』 (PHP新書)、『人は死ねない 超長寿時代に向けた20の視点』(晶文社)、共著に『死に方のダンドリ』(ポプラ新書)がある。

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