尾上右近「カレー」と「歌舞伎」をつなぐ仕事観 年間360食「無類のカレー好き」で独自の存在感
その理由は、カレーとそのほかの食事の位置付けの違いにあるようだ。
「誰かと一緒に食べるときって、しゃべるために行くみたいなところがあるじゃないですか。でも、カレーはすぐ出てきて、すぐ食べ終わってしまうから、コミュニケーションには向いていない。僕がカレーを食べるときは、ほとんどしゃべらないので、誰かとはあまり行かないんです」
立ち食いそばに近い感覚のようにも感じるが、「こだわりのないエネルギー摂取は嫌なんです。やっぱり食事は楽しみたい。それで行き着いたのがカレーでした」
歌舞伎にこだわる時間を多くとるために
右近さんらしいこだわりは、日常にも垣間見える。
「服はほとんど、黒しか着ません。舞台で派手な和柄ばかり着ているのもありますが、色の組み合わせを考えるのがあまり得意じゃないみたいで。
ある時期、これとこれを組み合わせてって考えることがすごくタイムロスな気がして。その日着る服を考えているうちに、出かける時間になることが結構あった。それが嫌で、黒だけを着ることに決めた」
一瞬たりとも無駄にしたいくないタイプかというと、そういうわけではない。
「グズなので、なるべく時間をかからないようにしておかないと、どんどん時間のロスが生まれてしまう。だから黒の服しか着ないというのも、こだわりというより、自分に課している感じ」
それは、カレーにも通じている。
東京でも、地方でも、カレーを食し、家でもレトルトカレーをあいがけにして組み合わせを楽しむほどカレー好きな右近さんだが、自分でカレーを作ることは一切しない。
「一生やる仕事に携わっているので、なるべく密度の高い状態でありたいと思うし、歌舞伎にこだわる時間、考える時間、触れる時間はなるべく多く取っておきたいんです」
だから、食事は全国どこにでもあって、パッと楽しめて、パッと食べられるカレーがいい。そして、自分では作らない。実に明快だ。
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