「チェルシー終売」嘆き悲しむ人が多い本当の理由 突然の別れ、「メルカリで高額転売!」は悲しい

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たとえば、心の準備という意味では、「一定期間後の終売」をアナウンスするのはひとつの選択肢だろうが、期間の設定を見誤ると、ネガティブな印象を残しかねない。ちょっとでも「最後にひと稼ぎしようとしているな」とか「引き留めてもらいたいだけか」などと感じさせてしまえば、むしろ企業イメージの悪化につながってしまう。たまに街中で見かける、いつまでも閉店セールが続く店のようなものだ。

また、メーカー側の事情なのに、エモく演出しすぎるのも逆効果となりかねない。明治の競合である森永製菓は、かつて「ハイチュウ」のグリーンアップル味が生産終了(アソートタイプでは継続)になると、大々的なキャンペーンを行った。人気声優を起用したウェブ動画では、入れ替わるように登場した新製品「うまイチュウ 青りんご味」との世代交代が描かれていたが、これも人によっては拒否感を示す可能性があるだろう。

ハイチュウのグリーンアップル味(スティックタイプ)終売
「生産終了を決めたのはそっちでしょ…」と思わなくもなかった、ハイチュウのグリーンアップル味(スティックタイプ)終売

であれば、どのような見せ方がベストなのか。全国規模で販売される物流面でも、SNS上で一斉拡散される情報流通の面でも、ほどよいあんばいでコントロールするのは至難の業だ。

そう考えると、今回のチェルシーのように、終売直前に公表するというのは、それなりに正攻法なのかもしれない。過去には、数カ月後になって終売が報じられた老舗菓子も存在した。「とっくに消えていた」と知らされるときの喪失感と比較すれば、アナウンスがあるだけ良心的に感じられる。

ただ、希望を言えるのであれば、「一部エリアでの販売終了」的なイベントを挟みながら、それとなく終売に近づいているサインを出してくれると、消費者のショックも和らぐのでは……と筆者は思うのだ。それだけ、明治は愛されている商品を、多く抱えている会社なのだから。

長寿商品の最後が「メルカリで高額転売」は悲しい…

終売はもちろん、閉店やサービス終了など、惜しむ声はSNSで話題になりがちだ。一方で、こうした発表の際には「それだけ悲しむのなら、売り上げが減る前に買っておけよ」といった水を差す声も、ほぼ必ずセットで投稿される。

そうした指摘も、たしかに一理ある。ノスタルジーだけでは飯が食えない、これまた悲しい現実だ。しかしながら、消費者側が「いつまでも存在し続ける」と錯覚していたのであれば、市場原理だけを理由に批判するのは、あまりに短絡的な気もしてしまう。

いまメルカリに目を向けると、通常200円前後で売られている袋入り商品が、1袋1200円ほどの値付けで出品されている。本来のファンに届かないとなれば、半世紀にもわたって愛された人気商品の最期としては、あまりに悲しすぎる。

どうにかして、少しでもいい別れにできないものか。「最近買ってなかったけど、なくなるなら最後に買いたい」と思う気持ちを、うまく軟着陸させる手法を、誰もが待ち望んでいる。

城戸 譲 ネットメディア研究家・コラムニスト・炎上ウォッチャー

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きど・ゆずる / Yuzuru Kido

1988年、東京都杉並区生まれ。日本大学法学部新聞学科を卒業後、ジェイ・キャストへ新卒入社。地域情報サイト「Jタウンネット」編集長、総合ニュースサイト「J-CASTニュース」副編集長などを経て、2022年秋に独立。現在は東洋経済オンラインのほか、ねとらぼ、ダイヤモンド・オンライン等でコラム、取材記事を執筆。炎上ウォッチャーとして「週刊プレイボーイ」や「週刊SPA!」でコメント。その他、ABEMA「ABEMA Prime」「ABEMA的ニュースショー」などネット番組、TOKYO FM/JFN「ONE MORNING」水曜レギュラー(2019.5-2020.3)、bayfm「POWER BAY MORNING」などラジオ番組にも出演。政治経済からエンタメ、炎上ネタまで、幅広くネットウォッチしている。
X(旧ツイッター):@zurukid
公式サイト:https://zuru.org/

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