ワコール社長「S/M/L」で下着の価値は伝わらない 構造改革で社内に軋轢、社員説明会で伝えたこと

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――2023年4月の社長就任前に「ワコールグループ創立以来の危機」というメッセージはどのような思いで出したのですか。

正直に言うと、会社が危機的状況なのが従業員の皆さんに伝わっているのか? という不安があった。財務は大丈夫かもしれないが、売上高は徐々に下がっているし、収益性も落ちてきている。現状のやり方を変えなければ、会社全体が本当にまずい状況になってしまう、という思いだった。

もちろん、当社の歴史の中で培ってきた商品の品質だとか、お客さんから得た信頼は守っていかなければならない。だが、うまくいっていないブランドや商品を続けていいのか。

今回の中計で掲げた課題は、過去から言われ続けてきたことばかりだが、何か1つ変えようとすると「取引先との兼ね合いで」「不動産の文化的な価値が」などと言って先送りにしてきた。何も解決していない状況を、もうやめようよ、と。

下着がフィットする感覚を知らないのでは

――一連の改革で、商品や提案方法はどう変わりますか?

購買履歴などから、消費者像が以前よりも鮮明にわかるようになっている。従来は「(ヒット商品の)グッドアップブラ」に代表されるように、胸を寄せて上げるといったワコールの強みをそのまま提供価値として打ち出していたが、今なら1人ひとりのニーズに合った商品が提案できる。

ワコールは下着専業メーカーとして、マタニティやブライダルなど、用途に沿った下着を幅広く展開している(撮影:ヒラオカスタジオ)

既存顧客には個別アプローチを強化する一方で、実は下着に関心がない層が増えているという危機感がある。ユニクロやしまむらといった競合が伸びてきて、下着もS/M/Lといった分類で買えるようになった。決してそれが良くないというわけではないが、今まで採寸や試着をしてこなかった方は、下着が本当にフィットしている感覚を知らないのではないか。

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