ワコール社長「S/M/L」で下着の価値は伝わらない 構造改革で社内に軋轢、社員説明会で伝えたこと

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下着の価値を知らないまま、下着に対する期待感も薄れてしまっていると思う。その価値を知ってもらうために、3Dスキャンで全身18カ所のサイズがわかるワコールのスキャンビー(SCANBE)や、販売員がサイズを計測してカウンセリングを行う「ブラ無料診断」などを行っている。

こうしたサービスでは、販売員が無理に販売することはない。計測して、もしよければ実際に試していただいて価値を知ってもらう。こうした地道な努力をしていかないと、下着のマーケットは盛り上がっていかない。潜在顧客へのアプローチは、専業メーカーであるワコールがやるべきことだと思っている。

ROICの考え方はシンプル

――今回の中計策定は、東証からの「PBR1倍割れ改善」の要請に対する意思表示でもありました。

PBR1倍割れというのは、言ってしまうと会社の存在意義がないよね、ということだろう。世の中から期待されていない会社だと。

そのような会社に社員は勤めたいのか? という疑問が生まれるのは当然で、市場に対してもそうだが、社員に対する責任を果たす意味でもPBR1倍は当然超えないといけない。そのためには分母(純資産)を減らすだけでなく、成長性を上げていく必要がある。

――そのためにROIC経営(ROIC=投下資本利益率。投下した資本に対して、どれだけ効率よく利益を稼ぎ出せているかを示す指標)を導入したわけですか。

先に話した通り、うちには在庫、不動産など過剰資本が依然として存在する。ROICという言葉を使っているが、シンプルに言えば少ない資本でいかに効率的に儲けられるかを1人ずつが考えよう、ということだ。商品なら10品番作って無駄を出すのか、3品番だけ作って売り切るのか。

販売も同じで、大きな売り場を作ろうとしたら施工費はかかるし、在庫も持たなきゃいけない。それだけ大きな売り場が本当に必要なのかを考えてほしい。実際はここまで単純ではないが、すべてROICの考え方だ。

山﨑 理子 東洋経済 記者

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やまざき りこ / Riko Yamazaki

埼玉県出身。大学では中国語を専攻、在学中に国立台湾師範大学に留学。2021年東洋経済新報社に入社し、現在小売り・アパレルを担当。趣味はテレビドラマのロケ地巡りなど。

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