最大5割引「北陸応援割」4県で異なる条件の差 予約開始日に「割引枠」がなくなるおそれも

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地域によっては、風評被害などもなく、復興支援はそもそも必要いのではないか、というところもあるだろうが、明確な線引きができない以上やむをえない側面はある。

こうしたなか、最も被害の大きかった石川県のみゴールデンウィーク以降も実施を予定しているほか、震災で特に大きな被害を受けた石川県の能登地域では、70%割引という強力な割引制度を将来実施することを事前に告知したのは得策だろう。

能登は北陸でも、とりわけ個性的な文化や景観を持つ地域である。今回の北陸応援割を機に北陸を訪れる人も多いと思うが、能登地域を対象とした割引制度が実施される際には、ぜひ足を運んでほしいと願っている。

早期に予約枠が埋まる可能性も

もう1つは4県トータルで約94億4000万円という予算額だ。

もともと多いとはいえないが、事務局の経費を差し引くと、実際に割引へ投入できる金額はさらに少なくなる。その金額を4県で分け合うことになるのだ。この予算の半分以上を石川県が占めるため、残り3県の予算の割り当てはさらに小さなものとなる。

仮に80億円が実際に割引に使える額で、1人2万円相当の割引があると仮定した場合、割引の対象となる旅行者の数は40万人となる。2022年の4県の延べ宿泊者数は年間を通じて約2000万人。これを単純に1.5カ月分とすると、約250万人分となる。

つまり250万人の宿泊を伴う旅行者のうち、実際に北陸応援割を享受できるのは40万人、すなわち16%にとどまることになる。規模の小さな宿泊施設では、1施設あたりの割り当ては100人程度と予想されていることもあり、予約受付開始日に予約枠がすべて埋まってしまう宿が続出しそうだ。

大々的に割引を宣伝した結果、すぐに割引枠が埋まってしまうと、宿泊施設はその対応に追われるばかりか、多くの顧客に対してお詫びをする必要が出てくる(実際に予算枠を決めているのは宿泊施設ではないので、お詫びをする必要は本来ないのだが)。

顧客として数少ない一部の人だけが割引を享受し、自分は得られないという不公平感が不満を増大させてしまうことにもなるのではないだろうか。だが、現時点では予算も確定してしまっており、いかんともしがたい。

利用者としては、電話予約でしか受け付けない宿や、有名観光地でないところにある宿をあえて選ぶことなどで、割引を獲得したい。

ツアーについては、旅行会社ごとに北陸応援割の予算が割り当てられ、宿泊については、宿泊施設ごとに予算が割り当てられる。予算の割り当ては、全国旅行支援の際の宿泊数をもとに算出される。

旅行会社について注意したいのは、福井県はOTAを「対象外」としていることだ(石川県は未定)。

新潟県・富山県はOTAも対象としているが、激戦も予想される。OTAの予約がとれなかった場合は、飛行機や新幹線などを自分で手配し、それに宿泊施設単独の北陸応援割を組み合わせるなど、次善の策をあらかじめ考えておいたほうがよさそうだ。

いずれにしても北流応援割のルールなどについては各県の公式サイトで確認を済ませ、個別の宿泊施設への問い合わせは極力避けたい。

橋賀 秀紀 トラベルジャーナリスト

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はしが・ひでき / Hideki Hashiga

東京都出身の40代。早稲田大学卒業。「3日休めれば海外」というルールを定め、ほぼ月1回の頻度で海外旅行に出かける。訪問国は121カ国。著書に『エアライン戦争』(宝島社)など。『週刊東洋経済』で「サラリーマン弾丸紀行」を連載した。Yahoo!ニュース 公式コメンテーター。記事の内容についてのお問い合わせ・取材の依頼などについてはこちらまで。

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