――すでに売れていたグループで曲の方向性を根本から変えるというのは大きな判断だったと思います。
そうですね。ただ、見た目は「全とっかえ」に見えるよう仕上げたけれど、実際はメンバーが1人増えただけで、グループ自体は大きく変わってないわけです。
料理でいえば、同じ食材で野菜炒めなのか、最後にルーを入れてカレーに仕上げるか、みたいな感じですかね。見た目は違うけれど、基本は同じなわけで。その意味で、「モーニング娘。の根本が変わったと見えるように仕上げる」というプロの腕の見せどころだったように思います。
「シャ乱Q」のフラストレーションが、
「モーニング娘。」で爆発!
――『凡人が天才に勝つ方法』には、「モーニング娘。」時代のような挑戦を「シャ乱Q」のときにできていたら、というふうにもお書きになっていました。
シャ乱Qの曲はメンバーが固定されているからこそ出来上がった楽曲という面がありました。一方で、シャ乱Qとしてはどうしてもできないこともあった。
そのフラストレーションが「モーニング娘。」で爆発していくわけです。「シャ乱Q」をストレスなしでやれていたら、絶対にモーニング娘。は生まれていない。シャ乱Qで蓄積していた、「こんなことやりたい、あんなことやれたらな」というアイデアがモーニング娘。で使えたんです。
シャ乱Qでいろんな経験を詰んだことが勉強になったわけだし、さまざまな経験の何が欠けていても僕の今はなかったでしょう。
「才能の領域」という話をするなら
――つんく♂さんの楽曲の中でもとくに大きくヒットした曲には、「Bye-Bye ありがとう さよなら(ズルい女)」や「君が先に眠るまでもったいないから 起きてる(My Babe 君が眠るまで)」など、一度聴くと忘れられない印象的なフレーズが含まれています。本には、そうした引っかかりを意図的に作ってきたとありますが、それは本当に凡人にできることなのでしょうか。才能の領域の話にも思えます。
歌は特殊なものに思われがちですが、これは例えば書く仕事に置き換えればわかると思います。記事の見出しの作り方にしたって、数をこなしていくうちに、「こうすれば読まれる、いい引っ掛かりになる」というのはあるんじゃないでしょうか。それと同じです。
やっぱり、感覚で覚えていく部分がどんな仕事にもあると思うんですよ。僕もずっとヒットする歌詞が書けたわけじゃないし、ヒットした曲の陰には無数のボツもある。
ただ、才能の領域という話でいうなら、僕の場合は幼少期から歌謡曲やポップスを聴く耳がちょっと普通とは違ったかもしれない。
このメロディーにこの歌詞を乗せるのはどういうことなんだろう。同じようにCMソングとしてよく聴く曲なのに、興味を持てない曲もあれば、つい歌いたくなる曲もあるな。歌詞の内容を意外とみんな覚えていないんだな。洋楽には、歌詞の意味はわからなくてもサビだけ歌える曲があったりするな、とか。
そうした音楽に対する読解力は僕が個性として持っていた部分かもしれない。そして、音楽が好きだった。であれば、あとはひたすらその読解力を磨くこと。訓練ですね。
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