中国BYDが「3500万円のスーパーカー」投入の野望 新ブランド「仰望」を世界の富裕層にアピール

✎ 1〜 ✎ 149 ✎ 150 ✎ 151 ✎ 最新
拡大
縮小

U8に続いて投入されたU9は(エンジンを搭載しない)純EVのスーパー・スポーツカーであり、価格はU8の1.5倍を超える。

いわゆる「スーパーカー」の分野には、イタリアのマセラティ「グラン・トゥーリズモEV」やイギリスのロータス「エヴァイヤ」などの純EVがすでに存在する。それらの価格は前者が198万8000元(約4157万円)、後者に至っては2000万元(約4億1823万円)を超える。

BYDは電動車の技術力を基盤に、新時代のラグジュアリー・ブランドの創出を目指している。写真は仰望ブランドの第1号モデル「U8」(同ブランドのウェブサイトより)

スーパーカーの市場では、ブランドの認知度とイメージの高さが極めて重要だ。新興ブランドの仰望が成功をつかむには、中国および世界の富裕層に対して独自のブランドイメージを訴求しなければならない。

中国の国海証券は2023年6月に発表した調査レポートのなかで、イタリアの「フェラーリ」を事例にしたスーパーカー・ビジネスの分析を行った。それによれば、フェラーリは自社のブランドイメージ(の維持と向上)を競争力の核心に位置づけている。

1000億円超を投じレース場を建設

フェラーリは、世界的な自動車レースに参戦することでブランドの独自性をアピールし、価格と利益率が極めて高いクルマの販売を可能にしている。それにより得られる分厚いキャッシュフローを新車開発に惜しみなく投入し、競合メーカーと差別化したクルマを世に送り出し続けるという「好循環」を形成していると、国海証券のレポートは述べている。

本記事は「財新」の提供記事です。この連載の一覧はこちら

BYDは、同社が誇る電動車の技術力により、新時代のラグジュアリー・ブランドを創り出せると考えている。とはいえ、スーパーカーという狭き市場で成功するには、(競合ブランドと差別化するための)文化的な要素やレース参戦の実績などをブランドにまとわせることが欠かせない。BYDには、それらにゼロから取り組むことが求められている。

同社の創業者で董事長(会長に相当)を務める王伝福氏は、1月に開催したイベントの際に「自動車レース専用のサーキット施設の建設に50億元(約1046億円)を投じる」と宣言した。BYDはレース場だけでなく、レーシングカーの開発やドライバーの育成などにも投資とサポートを行い、中国における自動車文化の醸成を後押ししていくという。

(財新記者:戚展寧)
※原文の配信は2月26日

財新 Biz&Tech

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ザイシン ビズアンドテック

中国の独立系メディア「財新」は専門記者が独自に取材した経済、産業やテクノロジーに関するリポートを毎日配信している。そのなかから、日本のビジネスパーソンが読むべき記事を厳選。中国ビジネスの最前線、イノベーションの最先端を日本語でお届けする。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT