白い恋人に似てる?「白い針葉樹」作る会社の挑戦 摘果リンゴ使ったお菓子「りんご乙女」も販売
北沢さん夫妻にとって、台風の被害は、経済的にも精神的にもつらい損失だったが、「商品開発や流通を担ってくれる、いざというときに駆けつけてくれるマツザワさんがいるから、また頑張ろうと思える」と語る。
昨年の秋、取材で訪れたその農園には、新しく植えられた若いリンゴの樹が一面に広がっていた。「産地」が守られ、続いていく。生きた事例が確かにそこにあった。
商品開発と合わせてマツザワが力を注ぐのが、山から海の向こう側へとつなぐトンネルを掘るような販路開拓だ。コロナ禍の間、全国各地の土産売り場が休業を余儀なくされる中、縮小するどころか、積極投資を仕掛けた地域がある。
那覇空港や、沖縄の百貨店でも販売
アジア向けの商品の「見本市」「出口」になることを見越して2017年に進出した沖縄だ。那覇空港国際線の保安検査場内で土産菓子を販売する店舗の営業権を取得し営業していたが、コロナ禍の始まりとほぼ同時に航空会社20社の週200便が全便停止となり、国際線の閉鎖期間は2年7カ月にも及んだ。
だが、各地の生産者やメーカーとつながるマツザワにとって、アジアにつながる沖縄の「城」を容易に手放すわけにはいかない。売り場従業員の雇用を守ったまま、追加資金を投じて店舗を拡張し、再始動に備えた。
沖縄への投資はこれだけにとどまらない。未開拓市場だった百貨店向けギフト市場への参入を決め、那覇市のデパートリウボウ内にあるケーキ店の買収に動いたのは2023年3月。長野産の青果を使った高価格帯のスイーツ商品の開発に乗り出し、さらに、デパート傘下のスーパー向けに高品質な旬のフルーツの卸販売も同時にスタートさせた。
これも、トンネルの先に出口を求める各地の生産者とメーカーの存在と、代々受け継がれた「地元の灯り」を絶やしてはならないという、松澤社長の精魂あってこその経営判断だ。
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