「日経平均4万円は高くない」と言える複数の根拠 「中国不動産バブル崩壊」の日本株への影響は?

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また今年ならではの話題として、5月に名目GDP600兆円達成が明らかになる可能性に期待したい。2023年10~12月期での達成はお預けとなったが、5月に発表されるGDP統計では、名目GDPの600兆円達成が明らかになる可能性がある。名目GDPと1株当たり利益が長期的に連動性を有することを踏まえれば、投資家が名目GDP成長率を前提に、中長期的なEPS(予想1株当たり利益)成長率に自信を深めると予想される。

名目GDPの600兆円達成は、日本経済がもはやデフレでないことを象徴し、株式市場への資金流入を促すだろう。なお、「“実質”GDP成長率が2四半期連続でマイナスなのに、なぜ株価は高いのか」という疑問に対しては「金額ベースの概念である“名目GDP”の拡大が続いているため」という模範解答があり、現在の株高もこれで説明が可能であろう。

中国の金融緩和姿勢も日本株の下支え要因

次に海外要因に目を向けると、インフレ退治の仕上げ段階にあるアメリカ経済の行方に安心感が広がる一方、中国経済に対する不安は依然として大きい。

中国当局は、不動産市場の調整に端を発する景気減速をいかにしてソフトランディングに持ち込むのだろうか。その点で注目されるのは金融緩和だ。2月20日に中国人民銀行は政策金利に位置づけている5年物ローンプライムレートを4.20%から3.95%へと0.25%ポイント引き下げた。

住宅ローン金利の基準となるこの金利の引き下げは、住宅市場を支援したい当局の意図が明確に伝わってくる。2月5日発効の預金準備率引き下げ(10.5%から10.0%)に続く措置で中国当局の金融緩和に前向きな姿勢が見て取れる。後述するように、こうした動きは日本株にとって重要な意味を持つ可能性がある。

昨年来、中国当局は人民元安に苦慮しつつも、不動産市場をテコ入れする目的もあって預金準備率と政策金利(中期貸出ファシリティ金利、5年物ローンプライムレート)を段階的に引き下げてきた。

そうした金融緩和が奏功したこともあり、地方政府によるインフラ投資は底堅さを維持し、M2(現金通貨+預金通貨+準通貨+譲渡性預金)や社会融資総量(銀行貸出+新規株式公開+社債等)といったお金の量を示す指標は底堅く推移している。

実のところ中国のクレジットインパルス(GDP比での新規貸出の変化を示す指標)と日本株には、「中国のクレジットインパルスが上昇すると、日本株が上昇する」という一定の関係が認めれられている。両者の関係はこの半年程度は安定しておらず、乖離が大きくなっているが、それでも方向感が顕著に相違しているわけではない。

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