デジタル時代にテレビが「勝つ」唯一の理由 マードック家御曹司が描くメディアの未来

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マードックの戦略的な動きや投資家向けの発言からは、ストリーミング配信や新しい広告技術、それに国際展開が今後の優先課題となるだろうことがうかがえる。また、彼が積極的に新たな戦略を推進していくのは間違いなさそうだ。

今後の業界がどんなビジネスモデルで成り立っていくかについては「いろいろな意見が出ている。まるでみんなが一致して答えを見つけ出せるかのように」と、昨年末の投資家向け会見でマードックは言った。「私の思うに、革新を進めたいなら行動あるのみだ」

マードックが注目している新分野が、ストリーミング配信とそれに伴うネット広告技術だ。従来型のテレビの視聴率が大きく落ちる一方で、インターネット経由の視聴が急増する中、マードックはネット視聴での新しい広告モデルを見つけ出すことが急務だと述べている。

「参入が容易でないのは承知している」と彼は5月、ある投資家向け会見で述べた。「だがストリーミングの環境は、広告プラットフォームとしては優れているし、参入できた暁にはそうなるはずだ。もし広告と一体化できれば、広告の負荷も軽くできるし、視聴者にとっては見たいものが見られるわけだからいい製品体験となるだろう」。

フォックス系のテレビチャンネルについて、「従来型のケーブルテレビの受信契約が必要ない、ストリーミング配信の開始を検討する気はあるのか」と問われ、マードックはフォックス・スポーツ、フォックス・ニュースなどでサービスを始める可能性に触れた。そうしたサービスは「非常にシンプルで競争力のある商品になるだろう」と彼は言った。

彼はこうも述べた。「それにそうしたサービスを購入する世帯や個人にとっては大変お得になると思う」

パソコンやスマートフォンなどネット接続できる機器が普及し、ストリーミング配信を行うウェブサイトや企業も増える中、出来のいいテレビ番組や映画の価値は高まっているとマードックは言う。「デジタル分野における真のキラーアプリはまさにテレビだ」と彼は12月の会見で述べた。

「高品質な、台本のある番組やスポーツへの需要は非常に大きく、わが社は大いに投資を行っている。米国に限らず世界中どこであってもだ」

マードックのグローバルなものの見方は、経営者としての考え方に大きな影響を及ぼすだろう。今でこそ彼は子供時代に暮らしたニューヨークに住んでいるが、これまで世界各地で暮らし、仕事をしてきた。

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