ゴールデンカムイ「アシㇼパの村」はどこにあるか 北海道の小樽近辺の地形から紐解いていく

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一方、アシㇼパが杉元を連れて自分の村に帰って来た2巻11話では、家の後ろにかなり高いY字型のものが林立しているのが見えます。これは実は網の干し竿です。網といっても流し網漁に使うもので、二艘の舟の間にこの網を張って、魚を追い込んでいくためのものです。漁の後はこのY字型の竿の間に棒を渡して、そこに網を掛けて干しておくのですが、家の屋根と比べるとどう見ても4メートルぐらいの高さがありそうですね。

実はこの光景は、今ウポポイ(民族共生象徴空間)のある、白老という海岸近くの村の古い写真をモデルにして描かれたものです。白老川の河口付近での漁に使われるものですので、広い川幅に合わせて長い網が使われているわけですが、はっきり言って山の中の村にはふさわしくない光景です。

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ゴールデンカムイ
2巻11話より(野田サトル/集英社)

しかし、それでもそのように描かれている以上、それが両立するような場所を小樽に近いところで考えてみましょう。つまり、山の中でありながら川幅が4メートル以上あるような広い川が流れているところということです。

小樽近辺にはダムと川がある

とはいえ、あいにく私は小樽近辺の地形的な状況についてはあまりよく知らないので、グーグルマップを見てみると、JR小樽築港駅の東に朝里川という川が流れています。この川は比較的山奥の方から流れていて、上流には朝里川温泉があり、朝里ダムが作られています。

このあたりならば、かつて舟を二艘浮かべて流し網漁をするくらいの川幅があったかもしれません。そしてダムが作られて人造湖ができているということは、かつてここにアイヌのコタンがあったのだが、ダムによって湖の底に沈み、今はもうないという設定をすることもできるかもしれないなどと、適当なことを考えておりました。

ところが連載終了後、『週刊ヤングジャンプ』編集部から相談がありました。「コミックス最終巻の発売記念に、南の島で王様になったらしい白石から、抽選で白石の肖像入りのコインが入った手紙が届くという懸賞を行いたいと思っているのだが、その届け先をアシㇼパと杉元が暮らしているコタンにしたい。ついては『北海道小樽コタン』という宛先でよいと思うか」という相談です。

つまり、架空の住所として所番地まで書くわけにはいかないので、「小樽コタン」というおおざっぱな表記にしておいて、昔はそれで郵便が届いたのだということにしてよいかということなのですが、いくら昔でも小樽は大きな町です。そして「小樽コタン」では、やはりアシㇼパたちが小樽の町中に住んでいるように見えてしまいます。

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