アメリカとの比較では「IT・インターネット産業」、欧州との比較では「ラグジュアリー産業」がその典型といえる。
適材適所、比較優位。各国が持つ資源や国民性、文化・歴史的な背景などから産業構造に違いがあるのは当然であるが、昨今、インバウンド旅行者などにより、日本の「美」や「技術」が改めて世界で高い評価を受けている。
一方で、日本に「ラグジュアリー産業」が乏しいことは非常に興味深く、そして日本人として残念に思う。
コロナ禍も明け、日本への外国人観光客は大きく戻り、「日本を直接体験し、買ってもらう」インバウンド需要の波は、当面、収まりそうもない。
政府は、2030年には、現在の約3倍の旅行者を受け入れる目標を掲げるなど、インバウンド需要は、日本の美や技術、歴史や伝統を世界に広める大きな起爆剤となることが見込まれる。
それは日本初の世界に冠たるラグジュアリー産業の勃興の変化点ともなりうるものである。
欧州には、LVMH(ルイ・ヴィトンなど)、Hermes(エルメス)、Richemont(カルティエなど)、Kering(グッチなど)などの高級有名ブランドを束ねる超大企業が数多く存在しており、私もかつてこれら企業の本社に幾度となく訪れた。
「デザインとクラフトの融合」「厳しい生産管理体制」「直営店主体の販売による徹底した流通・在庫管理」「不況であっても値下げをしない意思」「知的財産に対するロビーイング」など、多くを学ばせてもらった。
トヨタ自動車を超える「世界のラグジュアリー企業」
2023年末時点のLVMHの企業価値は、日本企業同首位のトヨタ自動車の1.7倍、エルメスはトヨタ自動車の0.9倍と、紛れもなく世界を代表する企業群である。
2024年から始まった新NISAでの定番商品である“世界株式指数”の投資信託を買われている方は、すでにこれらの欧州企業のオーナーとなっている。
欧州ラグジュアリー産業の盛衰は、これら企業の消費者だけではなく、より多くの人の資産形成として影響を及ぼしているのだ。
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