認知症女性「謎の行動」繰り返す涙ぐましい"真意" 帰宅願望や夜間徘徊を生む「過去の呪縛」とは?
「歩かなくてもいいんですか?」と確認すると、「今から行ったら、この人らの晩ごはんに間に合わんがな」と、やさしい笑顔です。
それ以降、施設で食事の準備をすることがおばあちゃんの日課になりました。
それまで、夕方になるたび家に帰りたがったのは、「家で夕食の準備をしなければいけない」という従来の習慣にとらわれていたからなんだと思います。
誰にでも、それまで生きてきた歴史があり、その人の世界やルールがあります。このおばあちゃんの場合、妻として母親として生活していた頃への想いが強く、毎日の家事をしなければならないという強迫観念に近いものがあったのだと考えられます。
その気持ちを否定しないで尊重していくことで、「家族のため」という強迫観念を、「この人らのため」という想いに変換できたのです。
それにより、夕方の焦り、帰宅願望はなくなりました。
認知症の人たちの行動には振り回されやすいものですが、本人の中では、何かしら理由や意味があることがほとんどです。その部分を掴めたなら、対処できるケースは少なくありません。
このおばあちゃんは、とにかく人の役に立てていることが嬉しかったのだと思います。この後は、夕食の準備に限らず、いろんなことを手伝ってくれるようになりました。
逆立ちしながら!? 夜中に徘徊するおばあちゃん
どうしてなのか、毎晩、トレーナーをズボンのように穿くおばあちゃんがいました。
トレーナーの首の穴がお股のあたりにきますが、穿こうと思えば穿けないことはありません。逆にズボンを着ようとします。こちらは腕を通すのがやっとで頭からかぶることはできないにもかかわらず、そうしています。
その格好で夜中の2時や3時に廊下に出てきて歩いているので、逆立ちして歩いているように見えました。
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