約102万円の学費は決して高くない
看護師国家試験の受験資格を得るためには、短期大学(3年課程)や大学で看護学を学ぶルートもある。ただ、コスト面から考えると主婦には専門学校の方が現実的といえそうだ。
都立の専門学校の学費を見ておこう。東京都保健福祉局のホームページによると、入学金は1万1300円。授業料は年間26万5700円で、3年間でかかる金額はユニホーム代や教科書代を含めた合計で101万7100円(入学金を除く)とある。
「看護師は一生使える仕事。一般的な事務職より給料はいいし、経済的に自立できる。その資格が取れることを考えたら、この学費は絶対に安いと思います」
こう話すのは、看護師歴10年の宮野京子さん(仮名、44)。30歳のときに夫が急死。泣き暮れる毎日を送っているときに起きたのが米同時多発テロ。そこで目が覚めたという。「世の中には私より大変な人はたくさんいる。そういう人のために尽くしてあげたい」。実家に身を寄せ、2人の子どもを育てながら都立の専門学校を卒業。33歳から大学病院で経験を積み、現在は形成外科の常勤看護師として働いている。ちなみに、夜勤もこなしていた大学病院時代、年収は新人ながら400万円を超えていたという。
33歳の新人ともなれば職場には自分より年下の先輩も多かったが「違和感はなかった」と宮野さん。「年下の先輩に容赦なくガンガン注意されることがあっても、素直に受け止めることができました」。
ただ、必ずしも全員がこうした環境に慣れるわけでもないようだ。一刻を争う医療の現場だからこそ、そこで働く人たちの口調もきつくなりがちだ。職業経験があるだけに、先輩に注意され続けていると人格まで否定されたような気持ちになってしまう人も少なくないという。それに耐え切れず、志半ばで辞めてしまう人がいることも確かだ。
一方で、看護師としての経験は浅くても、人生経験が武器にもなる。「社会人になってから看護師を目指した人は、いろいろな経験をしてきた分、患者さんや家族の気持ちを察することに長けている。これまでの経験は人と向き合ったときに活きてくるのです」(中山校長)。
高齢化時代を迎え、看護師はいま最も求められている仕事だ。病棟に限らず、地域密着型の診療所やクリニック、介護施設、訪問看護で活躍する道もある。セカンドキャリアとしての挑戦にはもちろん厳しい面もある。それでも、子育てをサポートしてくれる体制があって、「看護師になりたい」という確固たる意志があるのなら、少なくとも年齢だけを理由にあきらめる必要はなさそうだ。
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