米フォード、中国工場を「輸出拠点」に転換の思惑 「とても儲かっている」とファーリーCEOが本音

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フォードの決断の背景には、予想を超えるペースで進んだ中国市場のEVシフトがある。ほとんどの外資系自動車メーカーが急速な変化に対応できず、中国市場でシェアを落としている。

開示情報によれば、フォードの中国市場での販売台数はピークの2016年の127万台から、2022年には49万6000台に減少。同年の中国事業は約6億ドル(約888億円)の赤字に陥った。

フォードのジム・ファーリーCEOは、中国市場の過当競争から距離を置き、戦略の重点を輸出に移す決断を下した(写真は同社ウェブサイトより)

そんななか、フォードの経営陣は、中国のEV市場において中国メーカーと正面から競うのはもはや賢明ではないと判断した。2023年8月には、経営権の8割超を握っていた中国のEV開発子会社を、(完成車の)合弁会社である長安フォードの傘下に移管。中国市場におけるEV販売事業に関しても、合弁相手の長安汽車に主導権を委ねる体制に改めた。

VWや日産も輸出拠点化を計画

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対中投資の縮小に伴い、長安フォードの工場には生産能力の余剰が生じる。それを遊ばせないための方策が、輸出拠点への転換だ。フォードの中国法人によれば、2023年の中国からの輸出台数はすでに10万台を超えたという。

中国は世界最大の自動車市場であると同時に、今や最大の生産国・輸出国となった。その規模がもたらすコストメリットは計り知れない。フォード以外にもドイツのフォルクスワーゲン(VW)、日本の日産自動車、欧州のステランティスなどが、中国工場を輸出拠点化する計画を相次いで打ち出している。

(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は2月8日

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