「バウムクーヘン界隈」が盛り上がっている背景 老舗ユーハイムが「博覧会」の旗振り役も

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創業115年を迎える老舗企業のユーハイムだが、このほかにもさまざまなことに取り組んでいる。

2020年には、バウムクーヘンをコーティングするチョコレートからレシチンを抜くことに成功し、ほぼ食品添加物不使用に切り替えて「純正自然」を掲げた。他のギフト商品でもその後、2023年に「無添菓」宣言を行った。無添加の打ち出しは近年、大量生産の食品でも流行しているが、実はユーハイム、1969年から「純正自然」のビジョンを出している。

その方針は創業者の妻、エリーゼ・ユーハイム氏が、親が子供に食べさせたい食品を作りたい、と主張したことがもとになっている。ドイツでは、食品添加物不使用がバウムクーヘンを名乗る条件である。

バウムクーヘン
(撮影:今井 康一)

職人がつきっきりで焼く方法を導入

ユーハイムでは百貨店など全国で出店を増やしていく過程で、量産のために導入した機械に合わせ、食品添加物も加えていたが、製品作りがラクになってしまうため、職人の技術向上とよりよいモノを作る創業時の精神が失われるリスクが出てきた。そこで、純正自然を掲げて本体には食品添加物を入れず、職人がつきっきりで焼く方法を導入した。

「生地への熱の伝わり方が均一になるよう、ときどき混ぜます。卵白の気泡力で膨らませるため、気泡ができると層が剥落するリスクがあるので、見つけたらつぶします」と藤本課長は説明する。2022年時点で、兵庫・滋賀・愛知・千葉・福岡・札幌の6つの工場で合計68人の工場勤務者が、手作業による管理を含めて働いている。

2020年には、バウムクーヘン専用AIオーブン「THEO(テオ)」を開発。これは、ドイツの菓子店で修業してマイスターの称号を持っている5人の職人のうち、50年以上の経験を持つ職人の技術をAIが学習し、無人で職人と同等レベルのバウムクーヘンを焼き上げることができるオーブンだ。

発案者は、同社の河本英雄社長だった。河本社長が知人に連れられて南アフリカ共和国のスラム街に行った際、そこで暮らす子供たちにバウムクーヘンを食べさせたい、と考えた。紆余曲折の末、ロボット工学の研究者に参画してもらい、職人の技術をデータ化しAIロボットに学習させたのである。

バウムクーヘンを焼いているテオ(写真:ユーハイム提供)
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