シビックRS対新型GRヤリス、ホットハッチに脚光 一大ブームを起こしたジャンルに回帰する理由

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こうしたホットハッチモデルの新型車が発表されるのは、東京オートサロンならではといえるだろう。1983年の「東京エキサイティングカーショー」から続くこのイベントは、もともとチューニングカーと呼ばれるカスタマイズ車両の展示会から発展しているからだ。チューニングカーとは、市販車をベースに、エンジンをパワーアップしたり、足まわりなどを強化したり、走行性能をアップするカスタマイズのことだ。ホットハッチやボーイズレーサーなどと同じく、1980年代や1990年代に一世を風靡し、サーキットはもちろん、ワインディングなどの公道でも、前述した走り屋たちを虜にした。

東京オートサロンは、そうした歴史を持つことで、来場者にもレースなどのモータースポーツ愛好家やスポーツカー好きも多い。また、走り屋と呼ばれた世代にも支持されている。当然ながら、今でもホットハッチのクルマを愛するユーザーも数多く足を運ぶ。つまり、このショーでそうしたジャンルの新型車などを披露すれば、確実に購入が見込めるユーザー層へアピールすることが可能なのだ。自動車メーカーが、あえてスポーティなモデルをこのショーで初披露する理由は、まさにこの点にある。

クルマ好きに向けたメッセージ

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SUVや電動化モデルが全盛の今、ガソリンエンジン車のみの設定で、走りに特化したホットハッチは、当然ながら、かつてほどの販売台数は望めないだろう。だが、昔ながらの「クルマ好き」、メーカーにとって長年のお得意様と呼べるユーザー層の心には、確実に「刺さる」というわけだ。また、ホットハッチなどのスポーツモデルを出し続けることは、そうした層の「選択肢を減らさない」という、メーカー側の良心でもあるのだろう。

さらに、このショーが、今や世界的なカーイベントになったことも背景にある。近年は、海外メディアだけでなく、欧米やアジアなどからのインバウンドも数多く来場する。まさに、世界中にいるクルマ好き、とくにスポーツカー愛好家などに、自社の新型車をアピールできるのが東京オートサロンだ。かつての「走り屋イベント」が、現在、国内の主要な自動車メーカーから重要視されている理由には、こうした側面もあるのではないだろうか。

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平塚 直樹 ライター&エディター

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ひらつか なおき / Naoki Hiratsuka

1965年、福岡県生まれ。福岡大学法学部卒業。自動車系出版社3社を渡り歩き、バイク、自動車、バス釣りなどの専門雑誌やウェブメディアの編集者を経てフリーランスに。生粋の文系ながら、近年は自動運転や自動車部品、ITなど、テクノロジー分野の取材・執筆にも挑戦。ほかにも、キャンピングカーや福祉車両など、4輪・2輪の幅広い分野の記事を手掛ける。知らない事も「聞けば分かる」の精神で、一般人目線の「分かりやすい文章」を信条に日々奮闘中。バイクと猫好き。

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