これに対応するには、既存車は車載電子システムを抜本的に見直す必要があり、そのコストはフルモデルチェンジに相当する多額を要する。ポルシェは、SUVの「マカン」ガソリン車の生産中止を決めるに至ったほどだ。
ロードスターの場合、「CX-60用の最新電子プラットフォームをそのまま移植した」という。ただし、この最新電子プラットフォームだけで、車重は10kg増。
「グラム戦略」と言われる、各部品の軽量化をグラム単位で追求してきたロードスターにとって大きなネガティブ要因である。
それでも、4代目ロードスター(ND)を「できるだけ長く売りたい」という、齋藤主査をはじめとしたマツダの思いから、サイバーセキュリティ法の壁を超えることを決断したのだ。そのうえで、以前から温めてきたさまざまな改良をこのタイミングで一気に実現させた。
齋藤主査は「大幅改良とはいっても、デザインが大きく変わっていないので『何が変わったのか』と思う人もいるかもしれない。一方、ロードスターをよく知っている人にとっては、『そこまでやっていたのか』と思ってもらえるはずだ」と、大幅改良に対する自信を示した。
「走り」の改良の中身
試乗で感じたダイナミクスの領域では、大きく2つ。電動パワーステアリングとLSD(リミテッド・スリップ・デフ)の大幅改良だ。
電動パワーステアリングでは、ND導入時点では量産品として広く普及していなかったステアリングギアシステムを新規採用し、フリクション(摩擦)を低減。さらに、モーター制御をマツダ内製化して、特にハンドルを戻す際の制御を緻密化した。
さらにステアリングトルクセンサーの容量を増やすことで、街中から速度が高い場合やGが強い場合まで一貫したアシストを実現している。
また、リアの駆動の差動制限力をコントロールするLSDは、「RX-8」などからNDを含めて約20年間採用してきた、構造がシンプルで軽量な「スーパーLSD」から「アシンメトリックLSD」に変わった(Sを除く)。
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