KDDI、「ローソン5000億出資」に浮かぶ2つの懸念 三菱商事とは"折半出資"、見えづらいリターン

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今回の提携をめぐる話が浮上したのは2023年5月、三菱商事側からの提案がきっかけだった。背景には、ローソンが直面していた課題がある。

会見に登壇した三菱商事の中西勝也社長、ローソンの竹増貞信社長、KDDIの高橋誠社長
2月6日の会見に登壇した、左から三菱商事の中西勝也社長、ローソンの竹増貞信社長、KDDIの高橋誠社長(撮影:梅谷秀司)

ローソンの国内店舗数は約1万4600と、首位のセブン-イレブン(同2万1500)、2位のファミリーマート(同1万6400)に次ぐ3番手。コンビニ1店舗当たりの売上高を示す平均日販(全店)では、セブン-イレブンの67万円に対しローソンは52万円(いずれも2023年2月期実績)と、大きく水をあけられている。

三菱商事の中西勝也社長は、「グループとしても食品デリバリーなどアドオン(機能追加)してきたが、これ以上追加でサポートできることについて悩んでいた」と明かす。そこで、DX(デジタル・トランスフォーメーション)事業を強化している通信大手と組むことを考えたという。

KDDIは提携を通して、ローソンでのオンライン診療、スマホサポートといった新サービスの提供や、店舗を物品配送や防災の拠点にすることなどを想定している。「通信、DXで未来のコンビニを実現していきたい。(ローソンの)グローバル展開にも手伝えることがある」(KDDIの高橋社長)。

50%出資する必要があるのか

しかし、現時点でKDDIが5000億円に見合うリターンを得られるかは不透明だ。提携の内容を詳しく見てみると、2つの懸念点が浮かび上がる。

第1に、既存事業とのシナジー効果が見込めるかだ。

高橋社長は会見の場で、「シナジーとしてKDDIの利益を、というふうにはあまり考えていない」と言及。「(ローソン店舗で)スマホを売りたいと思っているわけでは決してない」とも語り、ローソンの成長を通じてKDDIグループの発展につなげる考え方を強調した。

提携がもたらす業績面へのインパクトや、今後手がける施策の開始時期などについても、明言を避けた。SMBC日興証券の菊池悟シニアアナリストは2月7日付のレポートで、「そう悪くはないTOB」と評価しつつも、「投資額に見合う効果があるのか見通しづらく、50%を取得する必要があるのかもわかりにくい」と指摘している。

KDDIは持ち分法投資利益として、ローソンの純利益(2024年2月期は500億円の予想)の半分を取り込めるようになるが、投資総額で割った年率リターンは5%程度にとどまる。純投資では妙味が薄いと言わざるをえない。

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