静岡リニア、相次ぐ「新局面」はJR東海に朗報か 県は47項目を整理、国は新組織を立ち上げ

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1月24日、JR東海はリニア中央新幹線事業に関する報道向け説明会を静岡市内で開催した。開業時期や先行開業区間など年末年始にかけて川勝知事から出されたさまざまな発言が、JR東海が発表している事実と異なる点が多くあり、誤解を与えかねない状況になっているため、あらためてJR東海の考えを直接説明したというのがその趣旨だ。

国やJR東海に比べると、川勝知事は事実関係の説明よりも持論を述べることを優先しているようだ。そんな空気を読んだのか、県で中央新幹線対策本部長を務める森貴志副知事は2月5日、「関係者の皆様がいろいろな話をしており、少し混乱している。それらの整理も含めて今後の進め方について話したい」としてJR東海との議論の進捗状況に関する県の認識を示した。

リニア静岡工区の環境影響評価については大井川の水資源、南アルプスの環境保全、発生土の置き場といった課題がある。県は2019年1月に専門部会を設置してJR東海と議論を始め、同年9月には「引き続き対話を要する事項」として47項目を列挙した文書をJR東海に送付。これらすべてが合意されない限り県はトンネル工事を認めないとした。

進展が見られない中、時間ばかりが経過。そこで国が調停役として有識者会議を立ち上げ、2020年4月から47項目について議論を始めた。水資源については2021年12月、環境保全と発生土については2023年12月に有識者会議が報告書をまとめた。これをもって国は47項目に関する議論は終了したと考えている。

国と静岡県、認識に大きな隔たり

森副知事が今回発表したのは47項目に関する県の見解である。全項目の議論が終わったとする国とは異なり、県の専門部会では疑問点が解消され、合意が得られたのは17項目にとどまり、残る30項目については引き続き協議が必要だという。国の認識とは大きな隔たりがある。

静岡県 森副知事
「引き続き対話を要する事項」47項目について県の見解を説明する静岡県の森貴志副知事(記者撮影)

それはさておき、47項目の内訳について見てみると、トンネル湧水の全量戻しに関する内容など水資源に関する項目は26あり、そのうち17項目が終了。南アルプスの環境保全は17項目で森副知事は「議論が進み、一定の進捗は見られた」と言うものの、終了した項目は0だ。トンネル発生土の置き場は4項目で終了した項目は同じく0となっている。

水資源については、トンネル掘削による大井川中下流域の地下水の影響は、河川流量の季節変動や年ごとの変動による影響と比べれば極めて小さいという報告が国の有識者会議から出されている。中下流域の利水者への影響はほとんどないとしている。それでも県は「トンネル湧水の全量戻し」を求めているため、JR東海は「田代ダム取水抑制案」を示し、ダムを管理する東京電力リニューアブルパワーと実施に向けて合意している。この状況を踏まえ、県はどのように取水抑制を進めるかという具体的な運用方法や、取水抑制できない状態が続いた場合の対応、突発湧水など不測の事態が発生したときの対応などで引き続きJR東海と対話が必要とする。

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