静岡リニア、相次ぐ「新局面」はJR東海に朗報か 県は47項目を整理、国は新組織を立ち上げ

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もっとも、実際のところ県はJR東海に昨年11月29日付で実施案を了解するという文書を送付している。つまり県はすでに了解しているのだ。従って、「引き続き対話が必要」といっても前提がくつがえるなどよほどのことがない限り時間がかかることはないはずだ。

環境保全と発生土に関する21項目については、対話が終了したものが1つもないとしており、国の有識者会議の報告書と真っ向から対立している。その理由を県に問うと、端的に言えば事前調査に関する見解の相違だ。

工事の実施前に調査を行い、工事がもたらす生物への影響の予測・評価を行い、それに基づき、計画を立案、実行、モニタリング、さらに必要に応じて計画を見直す。このPDCAサイクルのプロセスを県と国は「順応的管理」と呼び、その基本的な考え方は両者とも同じ。違いは事前調査をどこまでするかという点に尽きる。

国の有識者会議の中村座長は「何年かけてもパーフェクトなものはできない。不確実性の中で決めていかなくてはいけない」と述べるが、県の石川英寛政策推進担当部長は、「調査が足りないまま工事を始めたときに、取り返しのつかない結果が出ることを危惧している」。そのいっぽうで、「100%を目指し、何年もかけてやれというつもりはない」とも述べた。

専門部会での議論はいつまで続くのか

いちばん気になるのは、もし残る30項目の議論が今後も続くとしたら、それはいつまで続くかということだ。森副知事は「議論がいつ収束するとは言えないが、スピード感を持って県専門部会を開催し、解決を図りたい」としながらも、次回の専門部会については「委員の先生の都合もあるので月1回の開催は厳しい」。年度内に開催できるかどうかも未定だという。となると次の協議は4月以降ということになる。スピード感があるとはとても言えない。

なお、県は今回の専門部会の委員1人ひとりに個別に話を聞き、その意見を集約したというが、JR東海はどう考えているのだろう。県によれば、JR東海には2月2日に今回の内容を届けており、「違和感があれば教えてほしい」と伝えたところ、何も連絡がないのでJR東海も了解しているという認識だ。

JR東海からは公式のコメントは得られなかったものの、同社関係者は「県の認識とは違う」という。2日は金曜日で発表日の5日は月曜日。JR東海が内容を精査するには時間が少ない。そもそも、「47項目も含め国の有識者会議で議論した水資源と環境保全の問題で今後、議論すべき残された論点はない」(関係者)。とはいえ、県から要請があれば専門部会で引き続き協議を行うことは避けられない。

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