静岡リニア、相次ぐ「新局面」はJR東海に朗報か 県は47項目を整理、国は新組織を立ち上げ

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続いて2月7日、国交省の村田鉄道局長が県庁に川勝知事を訪ね、意見交換を行った。村田局長は1月21日に流域8市2町の首長との意見交換後、報道陣に県との意見交換について問われると、「県から要請があるか、または機会があれば検討したい」と話していた。それが今回実現した。

面談時間は30分の予定だったが、実際には1時間02分と予定時間を大幅に超えた。時間オーバーの理由について、村田局長は理由の1つとして「川勝知事がJR東海の事業計画の見直しといった持論を説明したため」と話した。47項目に関する国と県の認識の違いといった話題は出なかったという。

国交省 村田鉄道局長
国土交通省の村田茂樹鉄道局長(記者撮影)

今回の会談の目玉は、水資源や環境保全に対するJR東海の取り組みを監視・評価する新たな体制作りの構想だ。流域市町が積極的な国の関与を求めており、それが具体化に向け動き出したということだ。

会談の冒頭で、村田局長が「水資源の問題、環境保全の両分野について総合的な視点で継続的に確認する新たな体制を準備している」と話すと、川勝知事は思わず「おお」という声を発し、こう述べた。「大変興味深い話だ」。

会談終了後、村田局長と川勝知事がそれぞれ報道陣の取材に応じた。村田局長は「順応的管理に従って、事前・事後のモニタリングが非常に重要である」と話し、JR東海が調査を実施する水資源、環境保全の両分野のモニタリングを行う新たな体制作りに取り組むとした。具体的な設置時期や人選などについては、今後検討するという。

「2037年全線開業」を主張する川勝知事

川勝知事は「さすが鉄道局。本格的に乗り出された」と賞賛した。しかし、気になる点もある。モニタリング組織について「どういう人が座長を務めるかによって(組織の)性格が見えてくる」と話す。川勝知事が人選に口出しして県に有利な人物を登用させようとする可能性は否定できない。過去にも国の有識者会議で国が提示した人選案を県が「中立性に疑義がある」として拒否した経緯がある。

静岡県 川勝知事
国交相の村田鉄道局長との面談後、取材に応じる川勝知事(記者撮影)

それだけではない。川勝知事は「神奈川県内で建設中の車両基地が本当に2027年までにできるか、それもモニタリングしていただく」とも話した。静岡工区の環境問題から逸脱し、リニア計画全体におけるモニタリング体制の構築を求めたのだ。沿線自治体で作るリニアの建設促進期成同盟会に諮りたいというが、リニア計画そのものを監視する組織を作りたいのだろうか。

なかなか進まない専門部会の議論について、川勝知事は「遅らせるつもりはまったくない」と言い切った。しかし、「リニアは全線開通してその機能を発揮する。2037年の全線(品川―新大阪間)開業を目指して叡智を結集しなくてはいけない」。川勝知事がこだわるのは2037年であり、新たな品川―名古屋間の開業時期をどこまで2027年に近づけるかについては関心がない。

とはいえ、新組織がJR東海の大井川の水資源や南アルプスの環境保全に責任を持つのだとしたら、万が一、不測の事態が起きた場合、県は国に責任転嫁できるのだから、川勝知事にとって悪い話ではない。いよいよ川勝知事が難航するJR東海との協議について着地点を探る動きに出たのか、それとも独自の論法で工事を認めない毎度の光景の繰り返しなのか。川勝知事には、自身が県民の代表者であることを心して次の行動に臨んでもらいたい。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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