半導体市況はAI頼み?各社が語った不況の出口 用途別で明暗が分かれる企業業績の今後

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アドバンテストが今年期待を寄せるのは吉田社長の語った「HBM(広帯域幅メモリー)」向けのテスタだ。HBMとは、GPUなどのAI半導体と併せて使われる超高速の半導体メモリーである。

HBM市場をリードするのは韓国の大手メモリーメーカー・SKハイニックス。2023年のHBM製品の売上高は前年比5倍以上にまで拡大。2024年には生産能力をおよそ2倍に引き上げると公言している。

アドバンテストにおいてもHBM向けの売り上げ増が2024年業績に大きく貢献する見通しだ。高性能メモリー向けのテスタ市場について吉田社長は、「顧客の増産計画によって需要が急峻に立ち上がり、活況が数年続くと見ている」と強気の見方を示した。

ディスコや信越もAI関連に自信

AI半導体への期待という意味ではディスコも同様だ。

同社は、回路が形成されたシリコンウェハーを半導体チップに切り分けるダイサーや、ウェハー表面を研磨するグラインダといった装置を手がける。AI半導体の製造では、より高精度の加工を行う製造工程が増えることでディスコの装置に対するニーズが高まっている。

HBMを中心にAI半導体向けの売り上げ貢献は、2024年初めから本格化する。生成AI効果だけで500億円前後の増収になるとの見方が強い。2023年度の全社売上高は2878億円の見込み。増収インパクトは大きい。

エヌビディアのGPU
AI半導体の代表格として知られるエヌビディアのGPU「GH200」(写真:エヌビディア)

半導体材料のシリコンウェハーで世界トップの信越化学工業もAI半導体への期待をにじませる。ウェハー市場の約3割を握る同社にとってHBMなどAI半導体向けは売上高のごく一部でしかない。だが、汎用品に比べて高い品質のウェハーが多く使われるため、ポジティブなのは間違いない。

「AIは次の半導体の主要(な需要先)になることを、関係者みんなが期待している」。信越で半導体関連事業を統括する轟正彦専務の言葉は、業界の期待感を代弁するものだ。

一方で、洗浄装置を手がける大手メーカーのSCREENホールディングスは、AIとは違った分野での成長が続きそうだ。

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