近未来は人間のいない戦争に備える必要がある メタバース空間における戦争「メタマゲドン」も

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また、アメリカの高度なシミュレーション技術の重要性は高く、アメリカで検証や使用が始まっているライブ・バーチャル・コンストラクティブ(LVC)にも注目が集まっています。

LVCは、実際の装備品などを用いた現実的(Live)訓練、シミュレーターなどによる仮想的(Virtual)訓練、そしてネットワークやコンピュータの支援に基づく建設的(Constructive)訓練を有機的に統合することで、仮想現実融合空間での戦いを現実のものとします。

さらに、宇宙やサイバー空間の重要性が増大し続ける中で、デジタルツイン(サイバー空間内に現実空間の環境を再現すること)となった仮想・現実空間で戦争が行なわれ、メタマゲドン――メタバース空間から現実世界へとシームレスに波及する究極の戦争が生じ得る可能性が視野に入ってきました。これが戦争の最終形となるかもしれず、人間のいない戦争を前提とした、未来への備えが求められる世界になったのです。

認知領域への攻撃

現在、黎明期にある第4次産業革命においては、あらゆるものがインターネットにつながり(IoT:Internet of Things、モノのインターネット)、デジタルの世界と物理的な現実世界、さらに人間そのものが融合する環境が整備されつつあります。

このような技術環境の中で、AIが、物理的な実装化にとどまらず、現実空間と融合を深める仮想空間へ、そしてさらには認知空間へと、その応用の領域を広げていくことが懸念されます。

例えば、AIによる偽の動画や音声を作り上げるディープフェイクと言われる情報操作もその1つであり、今後、先端技術を用いた偽情報の流布にも警戒を強める必要があります。

アメリカ務省は、2020年5月8日、中国外交部がツイッター(現X)のプラットフォームにAIを使った「ネット水軍」を大量に投入したとして、中国の智能化戦争の中に偽情報攻撃も加わった可能性を指摘しました。2003年以降、中国では、有利な周辺環境など作為するために、「三戦」と言われる輿論戦(よろんせん)、心理戦、法律戦を展開しています。

「輿論戦」は自軍を鼓舞するための輿論形成を図るもので、日本の首相の靖国参拝に反対することもその一種です。「心理戦」は敵の抵抗意志を削ぎ、自らの意志を強制するためのもので、2010年の尖閣諸島中国漁船衝突事件におけるレアアースの禁輸などが該当します。

「法律戦」は自軍の行動が合法であることを主張し、相手の行動を違法だと非難するもので、一方的な法律を制定して海南省周辺海域からベトナム漁船を法的に排除したことなどが挙げられます。

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