近未来は人間のいない戦争に備える必要がある メタバース空間における戦争「メタマゲドン」も

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現在の偽情報などによる認知領域への攻撃は、この三戦をより洗練させ、進化させたものと見られます。それはあらゆるディバイスから収集された個人情報や一般情報がビッグデータ化する中で、より精緻で効果的な手段として着実に進歩を遂げているからです。

近年のデータ駆動の経済においては、SNSや携帯アプリなどから収集された幅広い情報がビッグデータとして蓄積される結果、選択的かつ効率的に、それらのデータを攻撃のデータとして悪用することが懸念されています。

人間が使用するディバイスから収集されたビッグデータを使い、攻撃者側は攻撃態様、時期などを主体的に決定し、逆にそれらのディバイスに対して特定の偽情報を流すことで、人間の認知領域への攻撃を行なっているのです。

中国ではAI技術で偽情報を発信するシステムも

このような攻撃は、ロシアがクリミア侵攻やジョージアでの作戦において展開したハイブリッド戦争の一形態でもありますが、中国はその手法を研究し、AI技術をさらに取り入れることによって、より効率的な偽情報を発信するシステムを作りつつあるでしょう。

今後、ICTの進化によって領域間の相互連接性が一層強まる結果、現実空間と仮想空間が融合を進める環境下において、戦闘領域を横断するシームレスな戦い方が主流となります。先進技術の進化を捉えて、それらの先進技術の実装化をいかに早く実現し得るかが鍵となります。人間が最終的判断を行なうのは変わらないとしても、作戦の展開の加速化につれて、人間そのものの関与がより低下していく可能性があります。

このように、先進技術の指数的進化によって現実・仮想融合の社会環境が進み、また、人類のコモンズ(共有財)の安全保障に対して関心と注目が高まる中、将来的にサイバー空間「メタバース」をコモンズの1つとして捉え、先行的に、安全保障上の影響について検討を続けながら、具体的な対応を準備する必要があります。

メタバースは、ソーシャルメディア、オンラインゲーム、拡張現実(AR)、仮想現実(VR)、暗号通貨などの多様な要素を含み、ユーザーが仮想的に活動できるデジタル現実と考えられ、新たなサイバー空間の概念を意味します。そこでは、最大の特徴として仮想空間における参加者たちが、現実空間では経験できないような体験を共有し得ることが挙げられます。

さらに、仮想空間における持ち物、通貨、サービスなどが現実世界と紐付き、暗号通貨などの利用によってその価値が保障されるようになるかもしれません。その結果、増大し続ける利用者は時間と空間の概念が変化する世界への没入感をより強めていくでしょう。メタバース空間への自由で安全なアクセスと利用の確保が喫緊の課題となる理由なのです。

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