名古屋の建設会社が「低家賃物件」を扱う強い覚悟 2代目社長が母子世帯への住宅支援で描く先
今では千年建設を通して名古屋市内に約100戸を所有し、市場よりも低い家賃でシングルマザー家庭に住まいを提供している。「中部圏のマンション価格はこの13年で約1.9倍。富裕層は資産を増やすため高く貸したい一方、シングルマザー家庭はもはや家を借りられない」(岡本さん)。
筆者が取材に訪れたマンションは一棟丸ごと千年建設が買い取り、現在は総戸数の半分近くにシングルマザー家庭が入居している。築40年近い建物だが市の中心部にあって駅や教育施設、スーパーなどのアクセスがよく、子育てと仕事が両立しやすい立地だ。
岡本さんは「普通の大家さんの場合は『いくらまで高く貸せるのか』と家賃を計算しますが、われわれは常に『どこまで安くできるか』を考えて価格を設定します」と語る。
さらに生活困窮者の状況に合わせて、契約条件を柔軟にしているという。安心安全な住まいを低価格で提供することで「母子が尊厳を取り戻し、次に進む一歩を踏み出せる」と強調する。
国の支援はハードルが高い
日本のシングルマザーの数は120万人で、平均世帯収入は月25万円。相対的貧困率48%はOECD加盟国の中で最低レベルとなっている。この原因はシングルマザー家庭が陥る「負のスパイラル」だ。
離婚や別居、DVからの避難の際、家を探そうにも無職の女性に家を貸す大家さんはまずいない。家が決まらなければ行政の支援も受けられないし、保育園に子どもを預けられない。そうなると仕事が見つからず、仕事がなければ家を貸してもらえない。
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