名古屋の建設会社が「低家賃物件」を扱う強い覚悟 2代目社長が母子世帯への住宅支援で描く先

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「まずは住居の提供、次に住まいとつながりを一緒に届ける福祉。そして経済性を確保することで持続可能な事業として広げることができます。住居、福祉、経済は政府でいうと国交省、厚労省、経産省と縦割りになるのですが、この3つの領域を民間がつなぐチャレンジは、イノベーティブな取り組みと言えると思います」

居住者同士の交流会も行われている(提供:LivEQuality)
 

岡本さんの目標は、このビジネスモデルが国内に広がり社会のインフラとなることだ。LivEQuality大家さんでは、2年後の2026年に累計提供世帯を50世帯に、その20年後の2046年には社会のインフラとなって1万世帯まで広がることを目指している。

ただし「支援するNPOやシェアハウスが増えてきて頼もしいが、不動産のノウハウが不足していたり、寄付や助成金を財源としていると住まいを取得するところまではまだまだ難しい」と岡本さんは指摘する。

家族経営との親和性

そこで注目するのが、ファミリービジネス=家族経営だ。何代も続いている家族経営の企業は、その地域との関係性を大事にする。経営の時間軸も長いので、長期的な視点で事業の方向性を見定めることができるという。

「私も家業を承継して気が付いたが、千年建設のようなファミリービジネスは、実はソーシャルビジネスとの親和性が高い」(岡本さん)と、社会課題解決への戦略を描いている。

そのうえで「さまざまなファミリービジネスで“ソーシャルトランスフォーメーション”のようなことが起こると、日本はさらに良くなるんじゃないかと思う」と語る。地方の建設会社の後継ぎの想いが、シングルマザー家庭を“居住貧困”から救う。やがてこうした志を持つファミリービジネスが全国に現れれば、社会変革の中心になるかもしれない。

鈴木 款 教育アナリスト

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すずき まこと / Makoto Suzuki

1985年早稲田大学政治経済学部・2020年同大学院スポーツ科学研究科卒。農林中央金庫で外国為替ディーラー等担当。NY支店に4年半勤務。1992年フジテレビに入社。営業局、「報道2001」ディレクター、NY 支局長、経済部長を経て現在解説委員。著書に『小泉進次郎 日本の未来をつくる言葉 』『日本のパラリンピックを創った男 中村裕』『日経電子版の読みかた』、編書「2020教育改革のキモ」。教育問題をライフワークに取材。テレビ・ラジオ出演、講演・大学講義や雑誌・ウエブへの寄稿多数。映倫の年少者映画審議会委員。はこだて観光大使。趣味はマラソン、トライアスロン。2017年にサハラ砂漠マラソン(全長250キロ)走破。

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